研究課題/領域番号 |
20K21892
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 和久 大阪大学, レーザー科学研究所, 教授 (90592535)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | LiDAR / TOF / 至近距離 / 半導体レーザー / 内視鏡 / 光ファイバー |
研究実績の概要 |
令和2年度の目標は、要素技術である至近距離(数十mm)におけるTOF技術(Time of flight:所要時間)の原理実証である。至近距離ではTOF時間が数百psとなるため高速化が必要であり、まず超高速の半導体レーザー駆動回路を入手し、赤色半導体レーザーにて1nsの短パルスを100kHzの繰り返し周波数で出射できた。次にこの短パルス光をターゲットに照射し、その反射光を感度良く低ノイズで受光するため、超高速の光検出器と高速ディジタルオシロを入手した。これらの実験装置の導入により、至近距離のTOF測定を行い、測定可能距離の低減化を図った。半導体レーザーから出射したビームが測定ターゲットにて散乱され検出器に至る往復の光路長の半分を距離として、ターゲットまでの距離40mm~200mmの範囲でTOF(所要時間:Time of flight)を測定した。このTOF時間に光速度を乗算すれば測定距離となる。実験の結果、距離40~50mmの範囲で測定誤差は0.9mm、50~100mmにて最大2.7mm、100~200mmにて最大4mmと良好な結果が得られ、至近距離(50mm前後)でのTOF測定の原理が実証できた。 また、現状の技術動向分析のため、至近距離が測定可能な市販のレーザー距離計(測定範囲50mm~40m)を購入し、同様に測定精度を評価した。その結果、オフセット誤差162mm、最大偏差14mmであり、至近距離では誤差が大きく、本研究の目的に使用できる精度は得られなかったい。 本研究の最終目的は数十μm径の超極細ファイバーを使った低侵襲の3D内視鏡の実現であり、要素技術となるLiDAR(レーザー画像検出・測距)の至近距離化技術(距離数十mm、精度サブmm以下)の原理が上記の結果によって実証できた。これによって内視鏡と患部の至近距離範囲でのLiDAR実現に向けた最初の目標をクリアした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の目標及び実行計画と進捗(カッコ内)は以下のとおりであり、全て予定をクリアした。 目標:①測定距離50mm(〇)、②レーザー光パルス幅1ns(〇) 実行計画:①超高速可視光半導体レーザー駆動回路の導入(〇)、②超高速フォトディテクター導入(〇)、③TOF測定、④市販品購入による先端技術調査(〇)
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今後の研究の推進方策 |
(令和3年度前半)光ファイバーを使った受光によるTOF測定を検証する。まずファイバー先端で可視光半導体レーザーからの短パルス光を受光するが、ファイバーへの結合時に受光量が減るため、結合効率を上げる光学系の改善を行う。ファイバーでの短パルス光の受光を確認したのち、開放系において可視光半導体レーザーからの出射光をターゲットに照射して反射光をファイバーで受光してTOF測定を行う。課題はファイバーでの受光量低下に対するS/Nの向上である。アバランシェフォトダイオードやMPPC(Multi- Pixel-Photon-Counter)を使って受光感度を上げる必要がある。また、ファイバー先端にピエゾ素子を形成する方法に関して机上検討する。 (令和3年度後半)可視光半導体レーザーの短パルス光を、ファイバーを通してターゲットに照射し、反射光はファイバーを通して受光してTOF測定を行う。つまりターゲットへのレーザー光の出射も、ターゲットからの反射光もファイバー先端を通して行う。ターゲットへの照射光量もその反射光量も低下するため、一段のS/N向上が課題である。さらに閉所空間内にターゲットとファイバー先端を配置してTOF測定を行い、最終評価を行う。課題は狭所乱反射低減と生体での反射特性評価である。光ファイバーを使って、本研究の目標値である可視光半導体レーザー光パルス長1ns、TOF測定距離50mm、測定精度1mmを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度にてほぼ予算通りの支出となったが、残額301円は消耗品で使用予定。
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