研究課題
本研究では、健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法である循環器病対策推進基本計画を念頭に、終末期心不全における簡易でポータビリティの高い検査機器の開発を目指した。終末期に近い入院中あるいは在宅医療を実施中の心不全患者から、サンプル採集の負担が少ない、呼気、尿、皮脂より遊離するガスを収集し、大阪大学産業科学研究所黒田俊一教授らが独自に開発した、網羅的匂い解析装置“ヒト嗅覚受容体センサー”により解析した。本装置の特徴は、ヒトが感じる匂い分子のみを検知し、単一の匂い分子のみならず複数の匂い分子を組み合わせとしてパターン認識が可能なことである。本研究では、ヒト嗅覚受容体センサー本を用いて、心不全患者の予後予測に有用なヒト嗅覚受容体を数個特定し、それに対応した患者由来匂い成分を心不全予後予測バイオマーカーとして同定することを目的とした。匂い成分の収集方法としては、前年度までの予備検討で、尿が検体輸送、検体保存が容易であり、比較的匂い物質の濃度が高いことが想定され、匂い物質の同定を、尿検体で行うこととした。臨床検体の収集を開始したが、研究期間を通じてCOVID-19感染症の拡大で、ウイルス感染を媒介する可能性のある臨床検体の収集が容易ではなかった。また、在宅医療で診療中の終末期心不全患者の尿サンプルの解析では、不特定多数のにおい物質が検出された一方、解析できたサンプルが少なく、機械学習等での解析も難しかった。
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