自律神経系は、全身の臓器に分布し、身体各所の生体情報を感知して脳や脊髄に送り(求心路)、各臓器の機能を調節する(遠心路)、生体恒常性や生命を維持する要のひとつである。また、感覚神経系は、全身様々な臓器に分布し、多様な生体情報を感知して、その生体情報を中枢神経系に伝える。また一方、自律神経系や感覚神経系は、正常臓器だけでなく、がん組織にも分布することが、最近になって、報告されつつある。この、がん組織に分布する神経は、がんの病態に関わる可能性がある。これらの末梢神経系の活動については、計測技術の不備のため、神経の個々の線維の動態や、臓器組織の内部における神経終末の動態は、十分には解明されていない。そこで本研究は、がん組織および胸腹部などの各種臓器に分布する自律神経系や感覚神経系の、組織への分布や、個々の線維の動態や組織 部神経終末の動態を、神経計測技術を用いて計測し解明することを目指す。メラノーマでは、腫瘍の中心部よりも、腫瘍周辺の血管部に交感神経が密に分布することが観察された。また乳がんでは、交感神経は腫瘍の間質に相対的に多いことが観察された。この交感神経に沿って、腫瘍関連マクロファージが存在することが観察された。さらに、がん組織において感覚神経を観察した。また、生動物2光子カルシウムイメージングにより、皮膚組織に分布する感覚神経の活動を、観察した。また、交感神経系を蛍光標識したマウスを作成し、胸部や腹部の交感神経幹を細胞レベルや軸索レベルで、明瞭に観察した。さらに、副交感神経系を蛍光標識したマウスを作成し、副交感神経を観察した。
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