本研究は、血中がん細胞が血管狭窄部を通過した際に生じる遺伝子発現の変化と遺伝子変異の蓄積を解析する方法論を実現する。そのために、毛細血管の狭窄部を再現した3次元マイクロ構造を半導体微細加工技術によって作製し、ライブイメージングによる狭窄部通過前後の1細胞毎の計測を通じて、がん細胞と細胞核内の物理的挙動について可視化するとともに、狭窄部通過後のがん細胞を回収し、遺伝子発現・変異を評価することで細胞機能の変化を1細胞解像度で解析する。具体的には、以下の3つの要素に関して、マイクロナノテクノロジーを用いて、装置及び手法の開発に取り組んだ。 1)In Vitro微小血管狭窄部3次元モデルの開発:前年度に開発した狭窄部モデルを有したマイクロ流体デバイスについて、流体操作周辺環境を整備し、細胞挙動観察を効率的に実施可能なシステムを構築した。 2)変形・損傷・修復挙動の計測:蛍光顕微鏡下に1)で作製したモデルを設置し、がん細胞をサンプルとして、狭窄部通過前後のがん細胞および細胞核の変形と形状回復に関するデータを物理刺激の履歴として取得するとともに、細胞内のクロマチン領域変化・DNA二本鎖切断を蛍光ライブイメージングにより可視化し、進化の駆動因子として評価する。本年度は、複数種の細胞について細胞および細胞核の挙動データの取得を実施した。 3)細胞の回収と遺伝子発現解析:狭窄部を通過した細胞群をマイクロ流体デバイスから回収し、特にがんの転移に関わる機能の評価を行う。本年度は回収と細胞観察を効率的に行うことが可能なデバイスの設計と評価を実施した。
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