本研究では、脳梗塞の病態進行に合わせた斬新なdrug delivery system(DDS)の開発を目的とし、好中球を薬物担体として用いるNeutrophil-mediated DDS technologyに関する研究を行った。好中球表面に搭載する扁平状マイクロ粒子 (マイクロディスク)を乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)を主材料にし、マイクロコンタクトプリンティング法で調製した。マイクロディスクの細胞接着部は、好中球に発現するCD206とCD44にそれぞれ親和性を有するキトサンとヒアルロン酸をLayer-by-layer法により積層させて作成した。平均直径3.9マイクロメートルのマイクロディスクをマウス好中球に添加したところ、約50%の好中球にマイクロディスクが結合した。顕微鏡観察の結果、マイクロディスクは好中球の表面に結合していることが明らかになった。マイクロディスクを搭載した好中球の遊走能をトランスウェル法で評価し、搭載による遊走能への影響はほとんどないことを示した。モデル薬物としてsuperoxide dismutaseあるいはタクロリムスを封入したマイクロディスクを好中球に搭載し、その遊走能について試験した。マイクロディスクに封入した薬物は好中球の遊走能にほとんど影響を与えなかった。マイクロディスクを搭載した好中球を炎症モデルマウスに投与し、その体内分布について検討したところ、好中球が炎症部位に集積性を示すことが示唆された。本研究により、Neutrophil-mediated DDS technologyを構築するための基盤となる成果が得られた。
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