「人工系(細胞サイズの巨大リポソーム)と生細胞系(好塩基球 RBL-2H3)の融合」 巨大リポソームと好塩基球(RBL-2H3細胞)の融合を、細胞融合装置(ECFG21、ネッパジーン)を、Saitoらの方法をもとに行った。リポソームとRBL-2H3細胞の融合の確認のために、巨大リポソームの膜を蛍光色素NBDで標識したホスファチジルエタノールアミン(NBD-PE)で可視化し、RBL-2H3細胞を細胞内の分泌顆粒をリソトラッカーで染色して融合させたが、融合が確認できなかった。そこで、より確実に細胞を標識できるように、RBL-2H3細胞の核をHoechst33342で核染色し、巨大リポソームは、膜を蛍光色素ローダミンBで標識したジヘキサデカノイルホスファチジルエタノールアミン(RhodB-DHPE)で、内部の水層を水溶性の蛍光色素であるカルセインで染色することによって、巨大リポソームとRBL-2H3細胞の融合を確認する系を構築した。 また、巨大リポソームのサイズ(直径20-50 μm)がRBL-2H3細胞のサイズ(直径10 μm程度)に比べて大きく、交流電場をかけた際にできるパールチェーンに巨大リポソームとRBL-2H3細胞が混在した状態にならないと考えられた。そこで、巨大リポソームのサイズを小さくするために、巨大リポソーム作成時のリポソーム内水相の液量を減らすことで、サイズを小さくした。 交流電場の条件として、電圧(Vrms)を20~40 V、時間を30~90秒で変化させ、直流パルスをかけたところ、40 V、45-60秒の条件で巨大リポソームとRBL-2H3の融合したハイブリッド系が観察された。しかし、融合効率が低く、viabilityや分泌活性を評価するに必要な融合細胞数が得られず、引き続き融合効率の向上のため、電場の電気的条件だけでなく、融合電極の改良も含めて検討する必要がある。
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