研究課題/領域番号 |
20K21913
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
大久保 佑亮 国立医薬品食品衛生研究所, 毒性部, 主任研究官 (80596247)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | Delta-Notchシグナル / 神経新生 / AAV / Multivalent ligands / シグナルの賦活化 |
研究実績の概要 |
記憶障害やうつ病などの社会的に治療要請が高い疾患と海馬神経新生低下との関連が指摘されており、治療を目指し様々な神経新生賦活化法が研究されている。しかし、単に神経新生を促進するだけでは後に神経幹細胞数や神経新生能の減少を伴うことが報告されており、副作用が懸念される。そのため、まず神経幹細胞の自己複製を、次に神経新生を賦活化する2段階の手法を開発する必要がある。Notchシグナルは神経幹細胞の自己複製を促進することが知られるが、一方で申請者はNotchとは逆方向のDeltaシグナルが神経幹細胞の神経分化を促進することを発見した。そこで、タンパク質のクラスター化技術を用いシグナル伝達能を高めたクラスター化Deltaタンパク質によりNotchシグナルを刺激し、神経幹細胞の自己複製賦活化を試みる。次に神経幹細胞特異的に感染する変異型アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus: AAV)用いDeltaシグナルを活性化させ、神経新生を賦活化する。Notch-Deltaは多くの組織幹細胞の増殖・分化を制御しているため、双方向のNotch-Deltaシグナル刺激法の確立により、様々な組織における安全で機能的な医療の早期実現を目指す。 今年度はステレオタキシック装置を用い、ラット海馬へAAVr3.45を直接インジェクションすることでD1ICDの過剰発現を試みた。感染細胞はGFPにより標識した。D1ICD過剰発現の影響を調べるために、GFP及び神経新生に関連するタンパク質の多重免疫組織化学法の条件検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、ステレオタキシック装置を用い、AAVr3.45をラット海馬へインジェクションし、D1ICDの過剰発現を試みた。また、GFP、Notch-Delta関連タンパク質、各種マーカー(神経幹細胞、神経前駆細胞、未成熟神経細胞、成熟神経細胞)タンパク質に対する抗体を用いた多重免疫組織化学法の条件検討を行った。複数の抗体を同一条件で使用するために、賦活化溶液の種類、賦活化温度、賦活化時間、抗体濃度、抗体の種類、脳切片の厚みなど多くの検討事項が必要であり、想定以上の時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、ラット海馬にクラスター化Dll1をインジェクションし、Notchシグナルの活性化によるNSC自己複製賦活化作用を検討する。次に、AAVr3.45を用い、DeltaシグナルをNSC特異的な活性化することで神経新生賦活化を試みる。最後に上述の実験を組み合わせ、Notch-Deltaシグナルを双方向に活性化し、NSCの自己複製及び神経新生の賦活化を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、予定していた学会発表を取りやめたことによる旅費分差額が生じた。加えて、同様の理由で購入予定であった消耗品の中で手に入らないものがあり購入を見送った。そのため、計画していた実験の遅延も生じた。 生じた差額は、見送った消耗品の購入に充てると共に、より詳細な解析をするために、抗体などの試薬の購入に活用する。
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