研究課題/領域番号 |
20K21922
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古川 萌 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 特任研究員 (90886219)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | イタリア / 美術史 / 美術批評 / ローマ |
研究実績の概要 |
本研究は、17世紀のフィレンツェにおいて展開した、美術制作を生業としない者による美術批評の位置づけを明らかにすることを目的とし、今年度は、前年度に引き続き「17世紀イタリア美術批評における当事者性」についての調査をおこなった。 『絵画省察』(1610年代)の著者である美術愛好家の医師ジュリオ・マンチーニ、そして『近代画家列伝』(1672年)の著者である美術批評家ジョヴァン・ピエトロ・ベッローリは、ともに17世紀ローマの美術について執筆しているが、その立ち位置はまったく異なっている。マンチーニは美術ディレッタントの先駆け的な存在で、主に受容者の観点から美術を論じているのに対し、ベッローリはローマの美術アカデミーでおこなった講演を元に著書を執筆した。それは、ベッローリがイデアの体現物として美術を語るのに対し、マンチーニが「目を楽しませること」を美術の究極の目的として設定していることからも明らかである。したがって、二人の著書の読解を通して、こうした立場のちがいや想定される読者のちがいが、美術の捉え方に対しどのような差異をもたらすのか検討した。 これらの読解によって得られた成果はまだ発表に至っていないが、近々学会にて発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度も新型コロナウィルス感染症の蔓延によりイタリアでの現地調査は困難であったため、国内で基本文献の読解を中心に研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
未だ現地調査の可否については不透明であるため、今後も文献の読解に努める。ボローニャの聖職者カルロ・チェーザレ・マルヴァジアによる『フェルシナ・ピットリチェ』の読解に取り組み、フィレンツェのバルディヌッチやローマのマンチーニ、ベッローリと比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画上、海外にて現地調査を行う予定だったが、新型コロナウィルス感染症流行により不可能となり、したがって次年度使用額が生じた。来年度は海外で調査できるようであれば現地調査を敢行する予定だが、難しそうであれば国内での調査に使用する。
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