研究課題/領域番号 |
20K21922
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古川 萌 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 特任研究員 (90886219)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2025-03-31
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キーワード | ヴァザーリ / バルディヌッチ / 美術批評 / イタリア / ルネサンス |
研究実績の概要 |
今年度は、前年度に引き続きヴァザーリとバルディヌッチのあいだの関連を探り、その影響関係やその後のフィレンツェ美術史に与えたインパクトについての研究を行った。具体的には、美術、とりわけ素描において、それが「芸術家の手の痕跡」であるという考え方を取り上げ、それがヴァザーリからバルディヌッチに至る流れのなかでどのように受け継がれていたのか検討した。まずバルディヌッチの主著『チマブーエ以降の素描美術家たちの消息』の成立の歴史的背景を概観し、彼が作品を直接観察することに強い関心を抱いていたことを確認し、次に、ヴァザーリのいわゆる「素描集」を取り上げ、彼がいかに画家の手の痕跡が残る素描や版画の収集に傾倒していたか明らかにした。最後に、ヴァザーリの「素描集」がバルディヌッチに与えた影響を考察し、手の痕跡としての素描という考え方がどのように継承されているか跡付けた。本研究は、学会誌『美学』に投稿し、掲載済みである。 また、フィレンツェ美術史の連続性を誇示する装置として、フィレンツェ大聖堂に残る芸術家記念碑群を取り上げ、それがいかにメディチ家によるパトロネージを都市内外に印象付ける機能を担っていたかについて、2023年7月にイギリス・リバプールで開催されたルネサンス学会で発表し、意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヴァザーリ研究のまとめに時間がかかり、予定していたバルディヌッチの著作の分析が遅れているため、やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はバルディヌッチの著作の分析にフォーカスし、フィレンツェ内のみならず、同時代のローマやボローニャ、ヴェネツィアの事例と比較することで、その特異性を浮き彫りにする。とりわけリドルフィやボスキーニに代表される16~17世紀ヴェネツィアで出版された美術批評と比較したい。その後、研究結果をまとめて学会で発表し、学会誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の資料購入費および学会に際した渡航費は、残りの金額すべてを使うほどの支出額にならなかったため。次年度使用額は、引き続き書籍等の資料購入費および学会発表時の旅費に充てる。
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