研究課題/領域番号 |
20K21926
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
加藤 大介 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 特任研究員 (90887225)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 3Dプリンター / PLA樹脂 / デジタル彫刻 / 乾漆 |
研究実績の概要 |
本研究は、3DプリントしたPLA樹脂に乾漆の持つ優れた耐久性を組み合わせることで、デジタル原型を乾漆彫刻と同等の強度で実体化させることを目的とするものである。植物を原材料とするPLA樹脂と漆は、石油を原材料とする樹脂に比べて環境に与える負荷が少ないという特徴を持つ。両素材を彫刻制作の主たる素材とすることに成功すれば、制作過程で排出される廃棄物や、制作活動全体でのCO2排出量を減少させることが可能となる。 初年度の進捗としては、まず3Dプリンターと各種材料、液タブ等の実験に必要な機材を速やかに揃え、研究に必要な環境を整えた。次にモデリングソフトにて出力用3Dデータを作成し、小型の彫像を複数個出力、それらを研究計画調書の図A、Bの技法にてそれぞれ乾漆像に置き換え、漆を充分に硬化させたのち、一般的な彫刻としての強度を兼ね備えているかどうかテストを行った。完成した乾漆像は対候性、耐衝撃性共に十分な強度を有しており、これにより本研究にて提唱する技法が実際に小型彫刻へ使用可能であることが確認された。 次年度は胸像サイズや1/3サイズの全身像といった、前年度に比べて大きなサイズの彫刻に挑戦し、この技法が比較的大型の彫刻にも応用可能であるかどうかを確認する。完成後は前年度と同様に耐久性のテストを行い、その結果を踏まえ、図A、Bの技法がそれぞれ彫刻として実用的なものかどうか、またどのような展示環境に適しているかについて結論を出す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標であった、研究環境の整備と小型の彫像の出力については無事に達成し、強度のテストについても概ね想定していた通りの結果を得ることが出来たので、本研究は現状のところ順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究は当初の実施計画通りに進展したので、今年度も実施計画に従って研究を進めていく。具体的には、まず昨年に比べて大型サイズの彫刻の出力に挑戦し、本研究の技法が大型の彫刻にも応用可能であることを確認する。出力し乾漆技法にて強化した彫刻には順次耐久性のテストを行い、その結果を踏まえ、研究計画書の図A、Bの技法がそれぞれ彫刻として実用的なものかどうか、またどのような展示環境に適しているかについて結論を出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の最終年度は、前年度に比べて大型の彫刻制作に取り組む予定となっており、その為にはより多くの実験材料が必要となる。またプリンターの故障などイレギュラーな事態が起こった際の対処にも研究費が必要となる。これらの理由より、最終年度は初年度より必要な金額が増加することが見込まれた為、次年度使用額を繰越す判断を行った。 使用計画は上記の通り、追加の実験材料の購入と、機材の追加購入(修理含む)に充てる。加えて実験結果のアーカイブ化にも研究費を用いるつもりである。
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