本研究は、「ポスト世俗」というキーワードのもとに捉えられる現代の思想潮流の特徴を明確にすることを目的としている。この目的のために、本研究は「ポスト世俗」という用語が意味するところやそのパフォーマティヴな含意について一般的な考察を加えるとともに、公共圏において伝統的な諸宗教が示しうる政治的なポテンシャルを論じた理論的言説の検討を行った。まず、政治哲学者チャールズ・テイラーの言語論の検討によって、「ポスト世俗的」な公共性のあり方に関する規範的洞察を明確化した。ついで、ユダヤ性に関するジュディス・バトラーの議論から、宗教的伝統を現代政治への批判へと翻訳する可能性を引き出すことを試みた。
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