研究課題/領域番号 |
20K21931
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 聖子 大阪大学, 文学研究科, 助教 (80754259)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 小沢昭一 / 古代 / 無形文化財 / 文化資源学 / 芸能 / 日本音楽 / 価値づけ / 放浪芸 |
研究実績の概要 |
本研究は、文化財保護制度の正統性の概念に影響を与えた、明治期から戦後への日本音楽研究の学知の形成過程を明らかにしてきたこれまでの研究の一環として、1970年代に無形文化財保護の在り方を批判した小沢昭一のLPレコード集『日本の放浪芸』の作品の誕生した文脈とそこに具現化された小沢の音楽芸能の正統性の概念を考察する試みである。令和2年度は研究期間が9月からの半年間であり、なおかつコロナウィルス感染症への対策から、対面での聞き取り調査と資料調査を次年度へと見送り、①対面での聞き取り調査のための対象者とのコンタクトとメールでのコミュニケーション、②そこから得た知見により拡張した対象者に関する基礎調査と対面での聞き取り調査、③これらの成果報告の一部に関するイベントを計画した。④LP『日本の放浪芸』に録音された音楽と言葉の五線譜化・視覚化(採譜ソフト・音声分析ソフトによる)に着手した。 ①レコード制作の関係者、小沢を知る芸能研究者とコンタクトをとり、聞き取り調査のための基礎調査を行い、令和3年度の聞き取り調査の計画を立てた。 ②これらの関係者から得た知見をもとに、1970年代に小沢と同じような趣旨で音楽芸能の正統性について<中央>に対峙した人々に視野を広げて資料収集と基礎調査を行い、可能な場合に対面での聞き取り調査を行った。特に1970年代に土笛・石笛の演奏を行っていたアーティストに着目し、サウンドアーティストの鈴木昭男氏には対面での聞き取り調査を実施した。 ③成果報告の一部として、鈴木昭男氏を大阪大学へ招聘してのイベントを計画した(コロナで延期)。 ④LP『日本の放浪芸』の第三作目にある節談説教とその小沢による創作を比較するために五線譜化を行い、論文として発表するとともに、その論考集を編纂した。また第一作目の誕生前夜に小沢が創作した作品についても五線譜化を行い、その成果の一部を口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間が半年でありなおかつコロナウィルス感染症への対策を予想していたことから、当初から基礎調査の年とする計画であった令和2年度は、予定していた対象者への対面での聞き取り調査が実現できなかった半面、これら対象者の知見を十分に有効利用することで、より広い範囲の対象者との対面での聞き取り調査を実現することができた。LP『日本の放浪芸』の音楽と言葉の五線譜化・視覚化について特に第三作目を扱い、今後の進展のパースペクティブを把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
対面での聞き取り調査を考えて次年度へもちこした聞き取り調査については、現在のコロナウィルス感染症の蔓延の状況下では、すべて遠隔での聞き取り調査に移行する可能性が出てくると考えられ、高齢者の方々への遠隔での聞き取り調査を存分に行えるよう周到な準備が必要である。LP『日本の放浪芸』の音楽と言葉について、残された作品(第一作、第二作、第四作)の五線譜化・視覚化を行い、データベース化する。早稲田大学演劇博物館の開館次第、「小沢昭一旧蔵資料」を閲覧する。成果発表としては7月の鈴木昭男氏を招聘してのイベント、年度後半ないし年度末に関連研究会・学会での口頭発表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍を古書で購入したため差額が生じた。今年度はコロナ禍で計画を変更して物品費を旅費より優先したため、差額は次年度の旅費へ計上する。
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