研究課題/領域番号 |
20K21931
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 聖子 大阪大学, 文学研究科, 助教 (80754259)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 小沢昭一 / 古代 / 語り / 音声 / 芸能 / 放浪芸 / 雅楽 / 正統性 |
研究実績の概要 |
本年度は、次の4つのことについて大きく研究を進めた。①1970年代以降の日本の音楽芸能における「正統」について、②同「古代」について、③「語り」という声のアート、④『ドキュメント 日本の放浪芸』の制作に関係した方々への聞き取り調査、である。 ①1970年代に創設された民間の雅楽団体における「正統」の概念について、日本雅楽会の元理事長である鈴木治夫氏に聞き取り調査を行い、放浪芸の概念との関わりを見出した。 ②1970年代から活動を始めたサウンドアーティストの鈴木昭男氏を大阪大学へ招聘して、2度にわたりお話とワークショップによる講演をして頂いた。「古代」という価値づけが、鈴木氏においては古代幻想の脱構築の機能をもっていることを理解した。本講演では、鈴木氏は、創作楽器を用いたパフォーマンスと作品についての講演と実演によって、学生や参加者が身体で「古代」を理解することを促した。 ③小沢昭一のレコードにおける「語り」の意義を分析する上で、音声ガイドの専門家である久保洋子氏に聞き取り調査を行い、とくに視覚障碍者の方のための音声ガイドの実態とその歴史について理解を深めた。音声による現実の創造とはなにか、「語り」という声のアートの繋がりを分析した。 ④LP『日本の放浪芸』のビクターレコードの元プロデューサー市川捷護氏の自宅を訪れ、当時の貴重な資料群を紹介いただきながらお話を伺うことができた。11月に3回にわたって実施した聞き取り調査の結果をふまえ、12月に小川洋三氏(当時小沢昭一主宰劇団プロデューサー)と津島滋人氏(当時小沢昭一マネージャー)を市川氏にお招きいただいて会合形式でインタビューをすることができた。津島氏からは、『日本の放浪芸』の関係の資料は早稲田大学演劇博物館には寄贈しなかったとの旨を伺ったことで、調査地を絞り込むことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目にコロナ禍で聞き取り調査がままならず、準備を人脈面でも十分にすすめられたことが、むしろ2年目に幅広くそして深い聞き取り調査の実施へと繋がった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度に残るのは、映像版『新日本の放浪芸』とその後のビクターの音楽芸能の記録のコレクションに関する聞き取り調査(1回)と、全体の分析、そして成果の公開である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による聞き取り調査の遅れがあり、1件の聞き取り調査分と全体の分析・成果の報告についての遅れが生じている。
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