本研究は現代ドイツにおける劇場環境の変化とそこで創作される舞台芸術作品のドラマトゥルギーとの相関関係を問うものである。研究実施にあたっては(1)研究資料の整備、(2)ドイツ国内の劇場およびフェスティバルの実地調査、(3)ドラマトゥルギー分析の3つの研究手法を用いる計画を立てた。 2021年度は本研究の最終年度であり、主に(3)ドラマトゥルギー分析に取り組んだ。特に日本とドイツの両国で精力的に活動する演劇作家・岡田利規に関する事例研究を行った。その研究成果として両国での創作環境の違いや岡田作品のドラマトゥルギーについて論じた英語論文‘Who knows we want to be an international artist?’ Producing Okada Toshiki’s theatre and the international sceneを執筆し、英国のPerformance Research出版による専門書『Okada Toshiki & Japanese Theatre(岡田利規と日本演劇)』に寄稿した。また日本演劇学会全国大会では「共同製作のドラマトゥルギー─現代ドイツにおける劇場環境の変化に関する一考察─」と題した研究発表を行い、国内の演劇研究者と議論を行った。 (1)研究資料の整備については前年度に引き続きドイツ演劇に関連する図書および映像資料の収集を行った。 (2)ドイツ国内の劇場およびフェスティバルの実地調査については、研究期間中に事例研究対象とするドイツ国内の複数の劇場の実地調査を行う計画を立てていたが、新型コロナウイルス感染症の影響により海外渡航が困難となったため文献調査およびオンラインを活用した調査に切り替えて実施した。
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