研究課題/領域番号 |
20K21935
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
篠原 典生 中央大学, 総合政策学部, 助教 (10882392)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 山西省明清建築壁画 / 関帝廟壁画 / 民間伝承 / 口伝 / VR技術応用 |
研究実績の概要 |
今年度は山西省明清時代宗教建築に描かれた壁画の主題に関する先行研究の整理と前年度までに完了していたプロジェクト調査の整理、研究およびVR技術を応用した研究手法の検討を中心におこない、その成果の一部を研究会で報告した。今年度の補助金は、主に上記の研究を遂行するためのVR関連設備および文献の購入、また次年度の現地調査に必要な機材の購入費に当てられた。 1.明清時代の宗教建築に関する研究は中国古代建築学の分野で多くの先行研究が発表されているが、建築に描かれた壁画についてはあまり研究されてこなかった。山西省五台山地区の建築壁画などについては近年いくつかの論著が出されている。今年度の研究では、関帝廟壁画に着目して研究会で報告を行った。報告では壁画内容を精査して分類を行い、『三国志演義』に近い系統、『関帝聖蹟図』に近い系統に分けて検討を加え、また各場面に付された題記の字句内容や誤記などから、これらの壁画に描かれた関羽伝説は、小説や説話集のような文献としてまとめられる以前の「口伝」の形態を残している可能性があることを指摘した。なおこの研究を遂行するにあたって、補助金を用いて関帝信仰や明清時代の伝承などに関する文献を購入した。 2.VR技術を応用した研究については、プロジェクトが制作したVR空間を実際に体験してみた。その結果「室内に入って壁画を見る」という疑似体験をすることは出来た。頭を動かしたり、振り向いたり、身体的動作を伴う壁画鑑賞を行うことで、現地で壁画がどのように見えるのかを体験することができるのはやはり重要な成果であった。単なる「画像」としてではなく、建築内での位置や描かれ方、見え方なども考慮に入れた研究ができる意義は大きい。同時に様々な課題も見えてきており、今後に活かしたい。なおこの研究を遂行するにあたり、補助金を用いてVR関連の設備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年末から起こったCovid-19の影響により、今年度の中国国内での調査は進展が見られなかった。中国国内での調査活動ができるようになるまでまだ時間がかかるだろう。また参加を予定していた国内外での会議や研究会なども延期や中止となり、国内での移動や図書館の使用も制限され、研究活動に大きな影響が出た。VR技術の研究への応用に関しては、当初複数人での体験と意見交換を予定していたが、三密回避のため断念し、代表者一人での検証となった。結果、VR酔いがひどく慣れるまで時間がかかった。 明清建築壁画の研究についても、2020年度に予定されていた調査が行われなかったのでサンプル数が確保できず、関帝廟壁画に関しても深い調査を行うことができていない。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は山西省の宝蔵寺壁画などの現地調査を予定していた。観音殿壁画の調査とVRで見た建築壁画を現地で再確認する予定である。しかし現在、中国に入国するとまず14日間の隔離が求められ、省をまたいだ移動にも7日から14日以上の隔離が再度求められれており、現地調査を行うには大きな困難が伴う。こうした制限がどのタイミングで解除されるか予測するのは難しく、予定している現地調査を行うことができるかどうかは未知数である。その場合、プロジェクトチームから提供されるデータや資料を使って壁画内容の検討などを行うことになる。VR壁画と現地壁画の比較検討は難しいかもしれない。
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次年度使用額が生じた理由 |
人の移動が制限されたことによる交通費、調査謝金などが発生しなかったため。2021年度はそれぞれの国内での移動制限は緩和傾向にあるので、国を超えた調査依頼などの経費に充てることとしたい。
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