研究課題/領域番号 |
20K21935
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
篠原 典生 中央大学, 総合政策学部, 准教授 (10882392)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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キーワード | 寺観壁画 / 民間信仰 |
研究実績の概要 |
中国明清時代の宗教政策や民間信仰に関する先行研究を広く渉猟し、当初想定していたよりも広い範囲で研究テーマをとらえなおしている。 近年、中国国内で山西省五台山の寺観壁画を対象とした図録が複数出版されており、それらを参考にして壁画主題の考察をおこなった。地獄めぐりと施餓鬼法要に関連する内容は複数見られるものの、宝蔵寺観音殿壁画の主題と同内容の壁画などはまだ確認できていない。 夏には京都大学人文科学研究所の「五台山仏教文化圏における文物の生成・継承・波及」(代表・稲本泰生教授)研究班において宝蔵寺観音殿壁画に関する研究成果の一部を発表し、参加者各位からご指導、資料提供などをいただいた。それらを踏まえて、中国仏教の聖地である五台山に存在する仏教寺院としての性格と、そこに「壁画」として表現されている信仰内容との関連性について、より深く考察を進める必要を感じた。 そこで、仏教、道教、民間信仰が複層的にあらわれている明清時代の信仰を山西省や中国国内に限定せず、東アジア世界に視点を広げ、明朝から長崎に伝えられた中国仏教の内容を観察するため長崎唐寺の調査をおこなった。また、長崎歴史文化博物館で開催されていた関連する展覧会および講演会に参加した。長崎に伝えられた明朝の仏教から見ると、仏教寺院の伽藍構成や宗教活動の中に道教的要素が加えらえれており、これは当時の山西省五台山の仏教寺院の性格や信仰内容を考えるうえで貴重な資料になり得ると考える。 また、研究期間延期によって生じた時間を利用し、明清仏教を東アジアの近世仏教的角度から捉えなおすべく、思想史や仏教学など関連領域の研究も目の届く範囲で参照するよう努めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
中国での現地調査を実施できていない。 申請時にはビザが免除される15日以内での調査を複数回想定していたが、2020年以降は中国渡航に制限がかかり実行できていない。 現在は徐々に制限が解除されてきているが渡航にはビザ申請が必須であり、地方における活動の可否なども不明瞭である。現地研究者と連絡を取り、共同調査の形でのビザ申請などお互いの安全を第一に考慮して現地調査実行の方法を模索中である。
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今後の研究の推進方策 |
今夏に現地調査を実行し、研究対象と同様あるいは相似した作例が存在するかどうかを調査する。その結果を踏まえ、論考を執筆し発表の準備をする。 中国国内の移動はほぼ回復したと聞いているが、地方の交通や宿泊などの状況は実際に行ってみないとわからないので、調査の範囲をどこまで広げることができるかが課題となる。現地の調査協力者に迷惑をかけないように留意した調査計画を練ることが必要。 先行研究や関連領域の研究成果を整理し、当初想定していた範囲よりも広い視野からの研究をすすめてきており、その成果も論文などにまとめて発表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
中国での現地調査費用として計上していた費用。中国国内での現地調査が実行できる条件が整わなかったため、2022年度においても現地調査には行けなかった。 2023年度は中国国内での移動はほぼ自由になっているとの情報もあるが、地方での調査に関してはまだ不透明な部分もある。現地の研究者と連絡を取り、渡航ビザと地方における調査活動の安全がある程度保障される見込みがついた場合、現地調査を実行する。 夏から秋にかけての調査を予定している。
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