研究課題
研究活動スタート支援
中国山西省宝蔵寺観音殿壁画内容について検討を加え、それが施餓鬼を中心とした内容であることを指摘した。観音信仰や十八羅漢などの仏教的要素のほかに、西遊記などの小説としてまとめられる物語的要素を加えて施餓鬼の功徳を表現し、本尊には施餓鬼を受ける対象としての焔口餓鬼あるいは面燃鬼王が描かれていることを明らかにした。また、宝蔵寺観音殿壁画の画面構成と日本の黄檗宗が伝える救抜焔口餓鬼陀羅尼経がなんらかの関連性がある可能性を指摘し、東アジア近世仏教信仰の交流の様相を考察するための資料ととして提供する。
中国考古学
本研究は中国明清時代の寺観壁画の内容を多角的に考察し、東アジア近世仏教信仰の実像を明らかにしようと試みたものである。中国山西省宝蔵寺観音殿壁画を対象にした研究では中国仏教の信仰内容の検討にとどまらず、日本仏教や民間信仰、明清小説などの領域から広く考察し、東アジア地域の民衆のあいだに広く共有されていた信仰について一定の内容を明らかにした。特に施餓鬼についてこれまで知られていなかった新たな材料を提供すことができた。