研究課題/領域番号 |
20K21937
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山田 麻里亜 早稲田大学, 會津八一記念博物館, 助手 (60884038)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 美術史 / 医学史 / 解剖学 / 骸骨 |
研究実績の概要 |
本研究では、江戸時代における医学の発展と同時代の美術の関係性に注目し、医学の進歩が美術作品の制作に如何なる影響を与えたのかという点について考察する。 これまでの医学と美術の関係についての研究では、その関係性を日本や西洋を含めた広域的観点から捉える傾向があった。日本美術史において医学との関わりが部分的に論じられることはあったが、それらは個々の作品の考察に留まっている。そこで本研究では、西洋から様々な知識や書物が流入した江戸時代に焦点を当て、医学書や解剖図について美術史学の視点から考察する。医学が大きく進歩した江戸時代後期に、美術作品に描かれる人体や骨も、その正確性において著しい躍進を遂げている点は注目される。絵師たちがいつ人体や骨格の構造について知る機会を得て、それをどのように作画に活かしていったのかを明らかにすることが本研究の目的である。 そのために「課題1:医学書・解剖図の制作に関わった絵師の整理」と「課題2:骸骨図の解剖学的正確性の検証」という2つの課題を設定し、研究を進めてきた。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、首都圏から地方への研究調査の日程調整が困難な状況が続いたことから、2020年度は「課題1」に重点的に取り組み、その結果として解剖図の作成に関わった絵師の整理作業はかなり進捗した。また、「課題2」についても同時並行で検証を試みたところ、解剖図の発展時期と美術品としての骸骨図の解剖学的正確性の向上には、半世紀ほどの時差があることが明確となった。2021年度はこの時差の原因究明を進めていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、首都圏から地方への研究調査の日程調整が困難な時期が続いたことから「課題1」「課題2」ともに文献整理や、各図書館のデータベース・図版などで画像を確認しながら研究を進めているため。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗状況はやや遅れている状況であるが、美術史研究において作品資料の実物を見ずして結論を導き出すことは困難である。それはこれまでの経験上、実物を間近で見て初めて分かる表現技法や、データベース・図版の類では見落とされた事項などが、研究を進めていく上で非常に重要な情報を孕んでいたことが度々あったからである。 故に作品資料の調査研究は必ず行いたいと考えており、そのためには研究期間の延長も視野に入れている。すでに調査予定の作品資料は2020年度に整理済みであるので、2021年度は新型コロナウイルスの感染状況を考慮しながら、可能な限り作品資料調査を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、首都圏から地方への出張が困難な状況が続いたため。2020年度に予定していた研究調査は2021年度に順次実施予定である。
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