瑩山紹瑾の講述録『伝光録』の写本群について調査を行い、本文の成立過程に関する研究を行った。研究対象としたのは、最も古い形の本文を保持する写本群(古本系統)である。古本系統は錯簡の共有状況・本文の特徴的な表記によって、4種の本文系統(A群・B群・C群・D群)に分類できることが明らかになった。これらは、1つの祖本から書写の過程で分派していったことが知られる。そして、B群には現存写本よりも古い写本からの修訂を行った痕跡が見出された。これにより、散逸した祖本の段階においては、錯簡や脱文が生じておらず、B群の本文がもっとも成立当初に近い本文を有していることが示唆された。
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