今研究は西洋哲学の「人文学」化と、西洋哲学の「学知」化が「内地」と「外地」それぞれに何をもたらしたか、以前の歴史との違いは何であったかなどについて「帝国主義と植民地主義」の観点から分析することを目指した。これまでの研究では、西周(1829-1897)がフィロソフィーを翻訳したこと、東京大学の哲学科をめぐる人物と学科課程が明らかにされたが、それは、哲学および哲学科が出来上がってからの事情を詳しく論じたものであった。本研究では、それぞれについて翻訳や学科編成がなされる以前からの様子について史料に基づき、翻訳と制度が「偉業」や「近代的事業」に収まらない、歴史的偶然と全体の中にあることを論証した。
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