研究実績の概要 |
本研究課題は、近世の偽作である神代文字資料に着目することで近世以降の学問史、宗教史、あるいは政治史のなかで神代文字を捉え直し、それが昭和戦時期に興隆を見せた思想的背景を明らかにすることを目的としている。その成果の一端は、『Religions』2022,13,199.において"Significance of Military Power in the Jindai Moji Text Hotsuma Tsutae—With a Focus on Susanoo and Yamato Takeru "として発表した。本論文では、近世に作成された『ホツマツタヱ』に記されているスサノオとヤマトタケルの役割について武力を通して考察したものである。
また、神代文字の文字そのものの性格についても考察を行った。これは、神代文字が疑字であっとしても、なぜ作成されたのかを言語的・思想的に明らかにする必要があると考えたためである。このことにより、多くの神代文字の性格や『ホツマツタヱ』の役割なども見えてくると考えている。この成果は、「ホツマ文字についての一試論」として『ASIA』第8号にて発表した。
さらに、近代の神代文字興隆を考えるために、酒井勝軍の資料の収集や整理を同時に行っている。これは、平田篤胤から続く平田派の神代文字研究とも日ユ同祖論とも密接に関わってくる問題である。これらは、現代の新興宗教にも関わる問題であることから、新興宗教に関する資料の収集も行っている。
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