延長となる第三年度の実績としては、まず、アリストテレスにおける「分析」概念を網羅的に検討した論文を「西洋古典学会第72回大会」において発表し、『西洋古典学研究』第70号に出版したことが挙げられる。また、プラトン『ソフィスト』における「分割」過程が定義の発見ではなく定義の論証として用いられていると論じた論文を「国際プラトン学会第13回国際会議」において発表し、その学会のSelected Papers Volumeへ投稿した(査読結果待ち)。さらに、プラトンの定義探求の方法論を支える「想起説」についてもさらなる考察を進め、その一部を名古屋大学における「現代の第一線の研究者による古代哲学講演シリーズ第一回」にて発表した。とりわけ『パイドン』における「想起説」を扱った論文はほぼ完成し、近日中に国際誌に投稿予定である。加えて、プラトン『ポリティコス』と『ピレボス』における「総合と分割法」、およびアリストテレスによるプラトンの「分割法」批判に関する考察をさらに進めた。それと同時に、本研究計画全体の目的である、プラトンの「仮設法」と「総合と分割法」の関係をギリシア数学における「幾何学的分析法」の観点から一貫的に捉えなおす研究書完成に向けて、その意義と概要を論じるイントロダクション部分を執筆し、「古代哲学研究ネットワーク第一回ワークショップ」にて発表した。本研究期間内に研究書完成には至らなかったが、上記のように考察は着実に進んでおり、早期の完成に向けて今後も継続して成果を取りまとめる予定である。また、上記の「想起説」に連関したプラトン『メノン』の「探求のパラドクス」に関する考察が基となり、新たな研究課題である若手研究「西洋古代における定義探求とその基盤――感覚知覚と生得概念をめぐる諸問題の考察」の採択につながっており、本研究課題の更なる発展が引き続き期待できる。
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