研究課題/領域番号 |
20K21949
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研究機関 | 長崎外国語大学 |
研究代表者 |
新里 喜宣 長崎外国語大学, 外国語学部, 准教授 (90879868)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | シャーマニズム / 巫俗 / 言説 / 宗教 / 韓国 / 崔順実ゲート / 大統領弾劾 |
研究実績の概要 |
本研究は1990年代から2010年代までを中心に、韓国で巫俗に対する多様な視点が形成される過程を明らかにするものである。上記の目的のもと、2021年度は巫俗に対する政治的な次元における言説を収集し、これを論文として発表する作業を行った。 2010年代は巫俗に関する政治的な言説が多く生産され、社会的にも注目を集めた時期であった。とくに2016年に起こった、朴槿恵大統領弾劾に至る「崔順実ゲート」では、巫俗に関する言説が活発に提起された。朴槿恵大統領を影から操り、国政を壟断した主体として崔順実氏の存在が明るみに出されたが、崔順実氏、朴槿恵大統領が巫俗を信じているという言説が形成され、これによって過激な政権批判かつ巫俗批判が提起されたのである。 このように、崔順実ゲートの巫俗言説は、巫俗が現代韓国でも依然として否定的に捉えられていることを示すものであった。しかし、崔順実ゲートの巫俗言説では、研究者やムーダン(シャーマン)自身も積極的に発言を行い、社会に向けて巫俗の価値を訴え、現代韓国において巫俗を擁護する主体が存在することも同時に確認された。以上の2種類の相反する巫俗認識の共存は、巫俗言説の通時的な展開を明らかにしてこそ理解が可能となる。 以上の研究の成果については、「『崔順実ゲート』の巫俗言説」(『宗教研究』81-2号、韓国宗教学会、pp. 157-186、2021年8月、韓国語論文)を通して発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
巫俗言説は政治的次元に留まるものではなく、新聞や雑誌、小説など、多様なメディアを通して形成されてきたものである。本研究の目的を達成するためには、1990年代から2010年代までを中心に、巫俗言説に対して総合的な観点からアプローチする必要がある。2021年度になし得た政治的な次元における巫俗言説への調査は、巫俗言説を総合的に検討した後、さらに意味があるものとなるだろう。 1990年代から2010年代までの巫俗言説を総合的に検討するためには、韓国で資料調査を行い、韓国の研究者と意見交換などを行う必要がある。しかし、コロナ禍によって渡韓が制限されており、不十分な面があることは否定できない。そのため、現在までの進捗状況はやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
1990年代から2010年代までの巫俗言説に関して、新聞、雑誌、小説などの媒体を中心に、さらに調査を進めていく予定である。調査者は2020年度および21年度は学術雑誌に論文を投稿し、研究の成果を公表するよう努めてきた。この方向性は2022年度も維持する意向であるが、2022年度はオンライン・対面かを問わず、学術大会で研究成果を発表し、巫俗言説に関して他の研究者と意見交換する機会を設けるよう努めていく所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスによる渡航制限により、韓国で実地調査を行うことができず、研究の進展が遅れたことによる。2022年度は韓国に渡航し、研究費を旅費として使用できたらと考えている。
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