研究課題/領域番号 |
20K21955
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
川島 拓馬 筑波大学, 人文社会系, 特任研究員 (50879666)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 日本語史 / 文法史 / 名詞 / 仮定条件 / 文法化 |
研究実績の概要 |
日本語における接続形式をテーマとして、①現代日本語における「限り」の意味・用法に関する考察、②接続詞「そのくせ」の歴史的変遷、③「限り」の歴史的変遷、の三点について研究を進めた。 ①現代語の「限り」について考察を行い、歴史的研究のための基盤とした。「限り」の用法については先行研究において混乱が生じていたため、語としての「意味」と当該文における文法的機能としての「用法」とを区別し、整理を行った。結論として、「限り」は何らかの点で「範囲」を表すものであり、その用法として程度数量用法と因果関係用法とに分けられることを主張した。「限り」の後件との関係性から、前者は程度修飾と数量修飾、後者は仮定条件と原因・理由とに区分できること、またそれぞれ用法の関係性についても述べた。 ②自身が以前に行った接続助詞「くせに」の変遷に関する研究を補うものとして、「そのくせ」についても論じた。近世前期の「そのくせに」の用例を考察することで、「くせに」および「そのくせに」の変遷過程に、「ある主体に対して、前件と後件の事態がともに生じている」という段階があったことを指摘した。近世後期以降の展開としては、逆接と累加の用法が同程度に見られたが、近代になると「くせに」の影響を受け累加の用法が縮小していることを述べた。 ③①の研究を受け、限りの用法の変遷をどのように捉えるかについて考察を行った。上代から近代に至るまでの用例を収集し、前出の用法別に区分を行った。具体的な成果発表は、次年度に行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定にはなかった前掲②の研究に取り組む必要が生じ、結果的に③の研究について初年度のうちに成果を公表することができなかった。上でも述べたように、次年度において口頭発表を行い、その後論文として公刊することを目指している。
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今後の研究の推進方策 |
既に述べているように、「限り」の歴史的変遷に関する研究成果の公表を行う。用例収集や現代語のケースにおける基盤構築は大方済んでおり、既に着手している部分も大きい。極力遅滞なく進めていきたいと考えている。 また当初の計画にあるように、接続形式「場合」の研究にも取り掛かる予定である。具体的には「限り」と同様、まずは現代語における位置づけについて考察を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルス感染症の流行により、各種学会・研究会がオンラインでの開催となった。そのため交通費や宿泊費を使用する必要がなくなり、当初旅費として計上していた分を支出することもなくなり、結果的に次年度への繰り越しが生じた。2021年度も引き続き学会はオンラインで開催される見込みであり、旅費の支出は困難と予想されるため、繰り越し分は研究資料の購入に充てる予定である。
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