本研究の目的は、グローバル規模で活発化している村上春樹原作のアダプテーション(翻案)の分析を通じ、アダプテーション研究の可能性とともに、村上文学の「日本」性および人種や国を超える普遍性について解明することである。 当初の研究計画はⅠ:舞台「海辺のカフカ」、Ⅱ:映画「バーニング」、Ⅲ:舞台「ねじまき鳥クロニクル」を対象としたものであった。前年度(2020)は、Ⅰ:舞台「海辺のカフカ」、Ⅲ:「ねじまき鳥クロニクル」に関する論文を発表した。コロナ禍のため、Ⅱ「バーニング」に関する韓国調査を断念したが、新しい分析対象で研究を行った。本年度(2021)は研究全体の方向性に関わる「アダプテーション研究序説」という村上アダプテーションに関する理論的な見通しの論考、漫画家本人のインタビューを行い、これまで論文化されたことがない貴重なテクスト「螢」、発表されたメディア媒体に着目した「三つのドイツ幻想」の論文を発表した。加えて、映画「森の向う側」の発表を行い、2022年度に論文化する目処がたっている。あわせて、舞台「海辺のカフカ」論を所収した『村上春樹〈物語〉の行方―サバルタン・イグザイル・トラウマ』の執筆を行い、2022年5月にひつじ書房から出版する。 全体として、当初の計画以上の研究実績を挙げることができた。また本研究の活動をより広範囲に公表するために、研究会のホームページの作成も進めており、2022年度中に開設予定である。
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