研究課題
最終年度には、摩天楼や都市の構造物を表象したテクストの分析を進めるとともに、論文としての成果発表を行った。アメリカの都市あるいは国家そのものの象徴とみなされる遊園地の存在に着目し、急激な都市化とともに移民社会となっていったアメリカ合衆国の文化的状況が、遊園地の表象のなかにあらわれていることを考察した。とりわけ、キューバの作家・運動家であるホセ・マルティと、日本の作家である永井荷風という、一時的にアメリカに滞在した二人の書き手が、19世紀末から20世紀初頭のアメリカ社会をどのように捉えていたかを分析した。両者は、アメリカの外からの視点と中からの視点を巧みに組み合わせながら、コニーアイランドの遊園地を象徴的磁場に位置づけ、産業都市化したアメリカにおける生活と、祖国であるキューバや日本での生活とを、両義的に比較してみせている。摩天楼の出現によって印象づけられる都市風景の変化や資本主義社会の進展といった状況が、遊園地という娯楽施設の描写を利用して複雑に描かれている過程が明らかになった。研究期間を通じて、摩天楼の誕生から現在にいたるまでの約150年間に、高層ビルがアメリカ合衆国やグローバル化した現代世界のなかでどのような役割を担ってきたのかを、論文や翻訳、発表を通じて検討してきた。現在、21世紀のニューヨークの摩天楼の「アトラクション化」について記事を発表する予定があるほか、まだ十分に発表できていない研究の蓄積があるため、今後論文での発表や書籍化などを計画している。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Finisterre II: Revisiting the Last Place on Earth: Migrations in Spanish and Latin American Culture and Literature
巻: 2 ページ: 113-129