研究課題/領域番号 |
20K21967
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
内堀 奈保子 日本大学, 危機管理学部, 准教授 (30632294)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | アメリカ文学 / 女性 / 東洋思想 / 超絶主義 / トランスナショナル / Elizabeth Palmer Peabody / 文学史 |
研究実績の概要 |
本研究の目指すところは、東洋思想に関心を寄せたElizabeth Palmer Peabodyの著述を分析することにより、米国における東洋思想の受容と当時のジェンダー状況との関連を提示することにある。米国における東洋思想の受容に関しては、主にRalph Waldo EmersonやHenry David Thoreauの著述における超絶主義思想との関わりの中でこれまで考察されてきたが、Peabodyについては、その東洋思想への傾倒の深さと著述の多さにもかかわらず十分に論じられてこなかった。彼女のトランスナショナルな思想を3つのアプローチから分析し、彼女が文学、歴史、教育、言語、宗教とジャンルを横断しながら米国のリベラリズムに与えた影響について再評価する。 令和2年(2020)年度は、Elizabeth Palmer Peabody(1804-1894) の小説Visionにおける東洋の表象のされ方とその意義に注目して考察した。考察にあたっては、Peabodyが影響を受けたと思われる東洋思想に関する書籍や資料、および、米国における東洋思想の影響を論じた思想史と宗教史に関する書籍や文献を収集、整理した。新型コロナウイルスによる渡航制限の影響で計画にあったPeabody Essex Museumへの文献調査研究がキャンセルせざるを得なかったが、電子アーカイブの利用や海外出版社からの書籍購入など、利用可能な方法での文献調査を集中的に行った。研究成果は、論文として現在査読申請中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスによる渡航制限の影響で計画にあったPeabody Essex Museumへの文献調査研究をキャンセルせざるを得なかった。そのため、令和2年度前半、令和2年度後半、令和3年度前半の3段階で当初計画していた3つのアプローチを、半期ずつずらして実行することとした。 令和2年度は、19世紀米国における東洋思想に関する資料を収集し、整理することができた。また、Peabodyの小説Visionにおける東洋と超絶主義思想の表象について考察し、研究論文にまとめることができた。コロナ禍の研究活動としては、おおむね順調に進んでいるということができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画は、令和3(2021)年度の前半に、Peabodyの歴史書、Key to History(1833)およびUniversal History(1859)における東洋史観の変容を分析し、Peabodyの思想の変化を辿る。また、入門書も含めて生涯で7冊もの歴史の著作を出版していることに注目し、彼女の置かれていた文化的、社会的な状況と、その意図していた効果についても考察する。令和3(2021)年度の後半には、Peabodyの東洋の言語についての著述に注目し、その言語論で提示されている独特の言語観とその形成過程を明らかにすることとする。 新型コロナウイルスの影響で研究に支障が出ているものの、参加可能な国内外の学会における研究成果の発表や代替資料調査の余地を探りながら、出来る限り遅滞のないように研究を遂行していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で当初計画していた米国への文献調査が困難となり、また、国内外の学会への出張に関してもすべての予定していた学会が中止もしくは遠隔での開催となったため、旅費予算はすべて執行せずとなった。海外渡航が可能となった際には、すみやかに対応できるよう、準備を進めながら、国内で出来うる限りの研究を進めていく。また、渡航が次年度以降も困難となった場合には、電子化された資料の取り寄せに予算と時間を大幅に割くこととする。
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