本研究は複合語のアクセントを題材とし,音声の産出と聴取の両面から意味関係が音声的実現に与える影響の解明を試みた。 音声の産出の面から,例えば「名字+名前」に比べて「名字+職名」の方が後部要素のアクセントが弱められていることがわかる。このことは,非融合アクセントは単一の音声的実現ではなく,複合語の意味関係に応じていくつかのバリエーションを持つことを意味している。音声の聴取の面から,例えば「名字+職名」と「名字+名前」とでは,後部要素が弱められない場合の音声の自然度が異なる。このことから,非融合アクセントの複合語は,複合語の意味関係によって自然な音声的実現の範囲が異なることが示唆された。
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