研究課題/領域番号 |
20K21971
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
KHALMIRZAEVA SAIDA 愛知淑徳大学, グローバル・コミュニケーション学部, 助教 (50880457)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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キーワード | 語り物文芸 / 語り物 / 『小敦盛』 / 『小栗判官』 / 『平家物語』 / 『一ノ谷』 / 九州 / 座頭 |
研究実績の概要 |
座頭による語り物文芸が20世紀末に途絶したため、その調査研究も急速に勢いを失った。だが、20世紀中に活動していた座頭から蒐集された語り物の演唱やインタービューの模様を録音・録画した200本以上に及ぶ音声・映像資料が保存されている。これらの資料に基づき、本年度実施した研究によって得られた成果は、以下1~2に詳細を示す通りである。 1本段階では、『一ノ谷』『小敦盛』に焦点を絞り、座頭のレパートリーにおける平家物について考察した。まず、九州地方の座頭による『一ノ谷』及び『小敦盛』を分析した。次に、『平家物語』諸本を始め、その他の語り物ジャンルのテキストとの比較考察を行った。これらの分析結果や先行研究を踏まえ、九州地方に伝わる『一ノ谷』『小敦盛』の特徴と、その他の語り物ジャンルとの関係、及び近現代におけるその他平家関連伝承の受容実態について芸能史論と物語論の観点から検証した。本研究の成果を2021年8月に実施されるヨーロッパ日本研究協会にて発表する予定である。 2 本段階では、座頭による『小栗判官』の詞章と旋律構成を分析し、伝承の輪郭や決まり文句・定型文を定めた。次に、説経を始め、同じ素材を扱うその他の語り物ジャンルとの比較を行い、座頭による『小栗判官』に特有の定型的な場面と表現、語り物ジャンルを通じて確認できる定型的な場面と表現、及び各語り物ジャンルの特徴となる要素を明らかにした。これらの分析結果に基づき、芸能史論、物語論、受容論の観点から、九州地方の座頭による『小栗判官』の特徴と、その他の語り物ジャンルとの関係、及び、『小栗判官』を事例として、再構築による語り物の生成・変容の仕組みについて論じた。本研究の成果を2022年5月に実施される北欧日韓研究協会にて発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス蔓延の影響で、図書館や資料館へのアクセスが困難であるため、研究調査が遅れ、必要な資料を予定していた通りに入手できない状況である。そのため、論文執筆が遅れている。加えて、同じ理由により、研究成果報告を予定していた研究会や学会の延期や中止が相次ぎ、研究成果の報告も遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、「研究実績」概要にて詳細を示した研究成果を取り纏め、論文執筆を進めている。同時に、座頭のレパートリーにおける説経物の分析作業を続けている。今後は、2021年3月に九州の福岡県・熊本県への現地調査で入手した資料をもとに、九州の地方語りの研究に取り組んでいく。具体的には、座頭による『菊池くずれ』『柳川騒動』『天竜川』の詞章と旋律構成を分析する。これらの分析結果や先行研究に基づき、(1) 座頭による地方語りの生成・変容の仕組み、(2) 地方語りに現れる史実や叙事的要素、及び地方の信仰と伝説との関係を明確にし、(3) 地方語りの意義や地方共同体における役割を解明する。また、最終的には、本研究の実施期間中に得られた成果を包括的に整理・体系化し、『九州の声の文化-その歴史・実態・意義』として一冊に纏める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス蔓延の影響で、図書館や資料館へのアクセスが困難であるため、研究調査が遅れ、必要な資料を予定していた通りに入手できない状況である。そのため、論文執筆が遅れている。加えて、同じ理由により、研究成果報告を予定していた研究会や学会の延期や中止が相次ぎ、研究成果の報告も遅れている。今後も調査研究や論文執筆を引き続き進め、本年度に延期となった研究会や学会での成果報告を予定しているため、これらにかかる旅費や論文投稿料等に使用する予定である。
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