研究課題
本研究の最終的な目的は、デジタル人文学による歴史研究のさらなる発展に貢献すべく財務記録史料データの分析手法を歴史研究者がひろく活用できる基盤をつくることである。近年デジタル人文学分野では、複雑な体系をもつ財務記録史料をコンピュータで処理しやすい形式の構造化データとして作成する方法論DEPCHAが国際的に議論されている。しかし、データ作成に向けた議論が進む一方で、そのデータを分析して歴史学の新しい知見を得ようとする取り組みは少ない。DEPCHAは、経済史・経営史研究を加速させ得るデータ作成手法だが、そのデータを処理する方法は個々の研究者に委ねられており、誰でも汎用的に使える分析手法はまだ確立されていない。そこで本研究は、プログラミング等の技術を要しない財務記録史料データの分析ツールを開発し、これを実際に用いた成果を示してその有用性を証明することを目的とする。2021年度の成果としては、COVID-19の影響で、長期の海外渡航が困難だったため、申請者自身の歴史研究に有用な史料を現地でデジタル撮影することができなかった。そこで、2020年度に東京大学史料編纂所助教である中村覚氏の協力を仰いで作成していたデータ分析ツールを用いて、以前入手していた史料データを対象とした分析を実施した。2022年度には、『人文学のためのテキストデータ構築入門』(文学通信)に、本研究の成果をまとめたものが掲載された。学会発表としては、デジタル・ヒューマニティーズ国際学会連合の2022年次大会およびText Encoding Initiativeの年次大会にて、本研究の成果をそれぞれ口頭発表とパネル発表として発信した。最終成果をまとめると、DEPCHAに準拠した会計史料の構造化データを分析するツールを作成したほか、このツールの実践例も研究業績として発表することができ、当初の目的をほぼ達成することができた。
すべて 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
https://naoki-kokaze.github.io/earlyModernSpanishLedger/