研究課題/領域番号 |
20K21991
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
後藤 はるか 駒澤大学, 総合教育研究部, 講師 (40751110)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | フランス20世紀文学 / フランス20世紀小説 / フランス現代演劇 / 現代文学 / ナタリー・サロート |
研究実績の概要 |
本研究は、フランス語作家ナタリー・サロートの文学作品の分析を総合的に行うことを通して、多様なジャンル(小説・詩・演劇・映像ほか)で変貌を遂げていった20世紀的な表現の展開を、新たな視点で捉えることを目ざしている。前年度に続き、本年度も、新型コロナ感染症対策の国内外の状況が安定せず、計画していたフランス出張はふたたび断念することになった。前年度は、サロートが作家としての道をつづけてゆく、その長い道のりの初期段階における激しい葛藤を、アメリカのサロート研究者であるアン・ジェファーソンの伝記がもたらした新たな情報とともに作品分析を通して検討を進めたが、本年度は、初期の道のりを経た、とくに第一次世界大戦後のサロートの作家活動を、周囲の作家たち、ヴィオレット・ルデュックやフランシス・ポンジュ、ロブ=グリエ、マルグリット・デュラス、そしてフランソワ・モーリヤックなどとの非常に豊かで広い文学的交友関係やフランス以外の国での活発な活躍などにも着目しながら検討することができた。とくに、ジャン=ポール・サルトルとシモーヌ・ド・ボーヴォワールにたいするサロートの態度や考え方に着目し、分析してゆくことが、この作家の文学の方法や、それとともに育まれた思想について考えるための手がかりとなり、作家の問題意識が、20世紀的というよりも、21世紀的な問題に結びつくことが明らかになってきた。作家の創作活動がどのような環境で進められ、作家がどのようなことに関心を広げていったかを明らかにすることは、20世紀文学におけるこの作家の創作活動をその全体像から改めて位置づけようとする本研究にとって重要な課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナ感染症対策の影響下で、本年度もまた フランスへの出張が困難となったが、国内で資料を収集し、また作品の分析作業をつづけることで、ある程度は研究を進めることができた。しかしながら、新型コロナ感染症の影響に加え、研究代表者自身の病気により、研究のための時間を十分に確保することが難しかったため、全体に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
国内外の新型コロナ感染対策の状況がつづくなか、フランス出張が叶わなかった。今後も同様の状況を想定し、効率のよい研究を進めてゆく必要がある。本研究は、フランス作家の多様なジャンルにおける表現を研究対象とすることから、とりわけ視聴覚資料へのアクセスという点で、フランス出張へ出張し、おもにBnF(フランス国立図書館)、INA(フランス国立視聴覚研究所)およびポンピドゥー・センター公立情報図書館、パリ第3大学図書館、パリ市立図書館における調査、研究資料の収集を行うことは非常に重要な要素である。今後の状況の変化に柔軟に対応できるよう準備をしておきたい。引きつづき、国内でできることを優先した具体的な分析作業を進め、第一次世界大戦後のサロートの作家活動を、周囲の作家たちとの豊かな文学的交友関係や、フランス以外の国での活発な活躍などにも引きつづき着目しながら検討し、考察をすすめていきたい。研究成果を、所属先である駒澤大学の紀要を中心とした媒体に論文を発表することで、研究を活気づけてゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の病気という事情により研究が大幅に遅れたため、研究期間を延長することになり、本年度分の残高がに繰り越され、次年度使用額が生じることとなりました。出張費などの生じる渡仏計画については今後も見通しが立ちにくいため、次年度は、ほとんどを資料収集のために使用することが見込まれます。
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