研究課題/領域番号 |
20K21992
|
研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
金田 迪子 実践女子大学, 文学部, 助教 (30876941)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
キーワード | 英米文学 / 現代演劇 / イギリス演劇 / キャリル・チャーチル / ハロルド・ピンター / デヴィッド・ヘアー / ポスト冷戦期 / ユーゴスラヴィア空爆 |
研究実績の概要 |
本研究は、現代イギリスの劇作家キャリル・チャーチルの後期作品と、同時代のユーゴスラヴィア空爆反対運動との連関を明らかにすることを目指すものである。本研究には、ポスト冷戦期における政治的変動とそれに呼応する市民運動が、現代イギリスの文学作品を形成する要因の一つであることを明らかにするとともに、チャーチルおよび同時代のイギリスの劇作家の作品と作家たちの市民運動への参加の実態を検証することで、同時代の社会の状況と密接な結びつきを保ちながら展開してきた現代イギリス演劇の特徴を明らかにすることができるという意義がある。 本年度は、イギリスの劇作家ハロルド・ピンターを中心に、デヴィッド・ヘアー、ハワード・ブレントン、デヴィッド・エドガーといった、ユーゴスラヴィア空爆反対運動に積極的に関っていた、チャーチルの周辺のイギリス人劇作家のエッセイ集やインタビュー等を収集・調査した。特にハロルド・ピンター、デヴィッド・ヘアー、デヴィッド・エドガーについては、ピンターのノーベル賞受賞記念講演をはじめとして、エッセイやスピーチの形で公的な場における発言を多く残していることが分かった。これらの資料の収集により、自身の政治的な見解について多くのコメントを残していないチャーチルの後期作品について、その歴史的・社会的・文化的な文脈を補完するための情報を多く得られた。 本年度は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、当初予定していたエフォートに基づく研究の遂行が困難であったほか、年度末に計画していたロンドンでの海外調査を実施することができなかったことなどにより、大幅な計画の遅れが発生した。そのため次年度以降において、今年度未着手となった課題に順次着手することを検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は所属研究機関への着任初年度となったことと同時に、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、所属大学での授業および学科運営業務が全てオンラインに切り替わった。その結果、研究計画作成時に予定していたエフォートに基づき研究を遂行することが困難となった。そこで本年度は、デジタルカメラやICレコーダー等の記録装置、プリンター等、今後の研究活動に必須となる備品等の購入を行うほか、チャーチルの周辺のイギリス人劇作家の著作やインタビュー集等の一次資料、作家研究等の基本的な二次資料、またそれらの現代イギリスの劇作家に大きな思想的な影響を与えたベルトルト・ブレヒトの著作集の収集などを通して、今年度以降の研究の基礎となる環境の拡充と、基本文献の充実を図った。 一方で、収集した資料を検討する時間を十分に確保することができなかったため、本年度に予定していたユーゴスラヴィア空爆反対運動をめぐる言説の調査および分析や、ユーゴスラヴィア空爆反対運動の実態の調査、イギリス人劇作家の反対運動への参加状況等については、次年度以降に検討するべき課題として残った。 また新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、今年度末に計画していたロンドンでの海外調査については、実施することができなかった。そのためこの海外調査についても、実施可能性を含めて再検討し、研究計画の修正を行う必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度の研究計画では、本年度に予定していた未着手の課題に取り組む必要がある。とりわけ、収集した資料をもとに、ユーゴスラヴィア空爆をめぐって、ブレア政権イギリスのNATOへの協力の是非について語られた発言におけるレトリックの分析や、それに基づく個々の劇作家の作品の分析等の、資料の読み込みに基づく検討を進める必要がある。また同時代のユーゴスラヴィア空爆反対運動の実態についても、先行研究の収集に着手する必要がある。 また今年度末に計画していたイギリスでの海外調査についても、実施を検討する必要があるが、現時点で日本国内での新型コロナウイルス変異株の感染が拡大しており、ワクチンの摂取予定も不透明のため、状況によっては海外調査を中止し、研究計画を修正する必要がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、年度末に計画していたイギリスでの海外調査を実施することができなかった。それにより、当初申請していた旅費および人件費・謝金の執行を行わなかった。そのため本年度の支出は物品費からのみとなり、残額を次年度使用額として繰り越した。 海外調査のための経費については、次年度以降に執行を検討しているが、新型コロナウイルスの感染拡大状況によっては、研究計画を修正する必要がある。また、今年度分の残額を含む消耗品費を一部旅費に充当し、海外調査の滞在期間を延長することを検討している。
|