研究課題/領域番号 |
20K21995
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
源 邦彦 東洋大学, 文学部, 助教 (10875587)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 二言語使用教育プロジェクト / 批判的言語学 |
研究実績の概要 |
本年度の研究成果は、1)本研究に必要なジャマイカその他のカリブ地域における二言語使用教育、ジャマイカ語(ジャマイカ・クレオール語)、ジャマイカの言語使用・言語政策に関する文献や資料の収集、そして、2)最終的に予定している学会発表、学術論文の理論的基礎となる論文を執筆した。1)に関しては、二言語使用教育プロジェクトを含むジャマイカ語に関する豊富な論文がすでにHubert Devonish博士によって執筆されており、本研究プロジェクトの現地調査を進めるための事前研究として読むべき資料は主要なものを含め相当数を収集することができたと考えている。以上の文献資料から、現地調査前半の終了後に学会発表、論文発表する予定の内容を、調査の部分は除き、以下の構成で部分的に執筆した。1. はじめに、2. 先行研究、3. 研究方法、4. ジャマイカの言語事情(4.1. 言語使用、4.2. 政府による言語政策―立法・司法・行政・教育・メディア・経済)、5. 西インド諸島大学モナ校言語学科二言語使用教育プロジェクト、6. 意思決定過程―モナ校言語学科と教育省(6.1. 意思決定者、6.2. 審議、6.3. 計画、6.4. 規模と予算、6.5. 実験校・教員・教材、6.6. 実施)、7. おわりに、という構成である。さらに、急遽、上述の学会発表・論文に通底する私自身の学問的姿勢を纏める学術論文を所属学科の紀要に執筆することにした。論題は「人種主義的世界システムにみる言語諸科学の「共犯性」―「ネイティブ―ノンネイティブ」パラダイム」である。この論文を下地に、現在の言語学、応用言語学、社会言語学に通底する考え方が、部分的にはジャマイカの二言語使用教育の失敗を導いている考え方と多くを共有し、その科学的権威こそが、部分的にはジャマイカ人の大多数を苦境へと導く役割を担ってきたことを指摘するつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年3月21日~28日、2021年9月12日~19日の計2回にわたり、ジャマイカで現地調査を予定していたが、2020年4月の緊急事態宣言の発令後、第1回目調査を2021年8月22日~9月5日、第2回目調査を2022年3月4日~3月13日に実施する予定に変更した。しかしながら、緊急事態宣言解除後も海外への渡航制限状態は継続され、また、ワクチン開発も時間を要することが明白であったため、現地調査に直接関連する諸準備をするというよりは、2020年度の研究計画における文献収集のみを行わざるを得ない状況になった。文献収集によって今のうちに前もってできる活動として、現地調査後に始める予定だった論文執筆の一部を開始することにした。さらに、2020年度に行うべきワークロードに見合うだけの年間活動量とするためにも、2020年6月には、本研究全体の根幹となる私自身の学問的な考え方を確立すべく、急遽、ジャマイカにおける二言語使用教育の失敗あるいはそれへの社会の消極的な姿勢を裏付ける批判言語学的な理論研究を論文として執筆するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
海外に渡航が可能となる時期を2022年4月以降、現実的には初めての現地調査が2022年8月、2回目の現地調査は2023年2月になることを予想している。その結果、2023年3月全国黒人研究学会(二言語使用教育プロジェクト)、2023年6月日本言語政策学会(二言語使用教育プロジェクト意思決定過程)、2024年3月社会言語科学会(学生へのインタビュー)、2024年9月社会言語科学会(学生の英語理解度調査)、2024年11月エボニクス会議(ジャマイカと米国アフリカ系奴隷子孫コミュニティーでの英語理解度、二言語使用教育の比較)での発表を予定している。それぞれの学会発表の直後には、それぞれの学会誌での出版に向け論文を執筆する予定である。 1回目調査: 2022年8月29日~9月5日はジャマイカキングストン、西インド諸島大学モナ校二言語使用教育プロジェクト担当者への深層インタビューと資料収集、教育省担当者との深層インタビューと資料収集、実験対象校の教員への深層インタビューと資料収集、2023年3月再訪時の調査手配のため非営利団体Children Firstと現地公立小学校との話し合いを実施 2022年9月8日~10月30日は、2022年3月のジャマイカでの学生へのインタビューと英語試験実施に向け、保護者や関係者と連絡調整 2回目調査: 3月6日~3月13日は、ジャマイカスパニッシュタウンの非営利活動法人Children Firstの補習校に通う小学生(ジャマイカ多数派の貧困層の子供)にフォーカスインタビューと深層インタビュー、教員に深層インタビューを実施、前回収集できなかった資料の収集、二言語使用教育プロジェクト担当者と教育省職員への補足インタビューも実施、公立小学校生数名にアメリカ公立学校で実施されている小学校一年生対象の英語能力試験(聴解問題と文法問題を追加で作成)を実施
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年3月21日~28日、2021年9月12日~19日の計2回にわたり、ジャマイカで現地調査を予定していたが、2020年4月の緊急事態宣言の発令後、第1回目調査を2021年8月22日~9月5日、第2回目調査を2022年3月4日~3月13日に実施する予定に変更した。しかしながら、緊急事態宣言解除後も海外への渡航制限状態は継続され、また、ワクチン開発も時間を要することが明白であったため、現地調査に直接関連する諸準備をするというよりは、2020年度の研究計画における文献収集、現地調査後に始める予定だった論文執筆の一部を開始することにした。また、急遽、ジャマイカにおける二言語使用教育の失敗あるいはそれへの社会の消極的な姿勢を理解することに役立つ、批判言語学的な理論研究を論文として執筆するに至った。これらの研究活動は、現地調査に必要とされる諸費用、現地で購入する予定だった文献資料の購入費用も必要としないため、所属大学の個人研究費で十分賄うことが可能であった。その結果、直接費用の支出は0円ということになった。今後の予算の使用計画は、コロナ禍によりスケジュールが先送りになっただけという事情もあり、2020年度に研究計画で定めた諸目的のために、同じく定めた予算配分で予定額を支出する予定でいる。
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