本研究では、中世絵巻の詠歌場面に着目し、絵画と詞書の間に新たな解釈が生成されていく機構を明らかにすることを目的として、時宗の歴代遊行上人の行状絵巻、遊行上人の和歌、西行物語伝絵巻諸本について検討を加えた。この検討により、『一遍聖絵』『遊行上人縁起絵』という二つの時宗絵巻から、中世時衆が早期から西行物語伝絵巻を受容していたことの傍証を見出すことができた。また、そこで東国の旅に注目して成果を見出した経験から、絵巻全体の詠歌場面へと視野を広げることで、信濃・京・西国での旅における詠歌場面の意義の解明へと発展させることができた。
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