研究課題/領域番号 |
20K22004
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
金子 奈美 福岡大学, 公私立大学の部局等, 講師 (10880908)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 少数言語文学 / バスク語文学 / バスク語 / 文学研究 / 翻訳研究 |
研究実績の概要 |
初年度の実施内容として、①以前からのバスク語作家ベルナルド・アチャガの創作と翻訳をめぐる研究の継続・発展、②バスク語文学および他の少数言語文学と翻訳に関する文献の収集、③他の少数言語文学・翻訳研究者との交流や情報交換を計画していた。 ①では、少数言語文学においてしばしば起きる自己翻訳(作者自身による自作の翻訳)が行われた作品が他の言語へいかに翻訳されるか、というテーマについて調査と分析、考察を行なった。自己翻訳された作品は、原語のテクストから、または自己翻訳テクストから訳されることもあれば、両方のテクストから折衷的に訳されることもあり、研究者自身が昨年刊行したアチャガの小説『アコーディオン弾きの息子』の邦訳は最後のケースにあたる。調査の結果、このテーマも、折衷訳というストラテジーも、過去の研究ではほとんど注目されてこなかったことが判明した。研究の成果は、2021年3月に開催された世界文学語圏横断ネットワーク第13回研究集会にて発表した。また、本研究は日本国内でのバスク語文学紹介のためのアウトリーチ活動も重視しているため、前述の小説の邦訳刊行後、一般読者向けに開催された複数のオンラインイベントに出演し、解説を行なった。 ②に関しては、コロナ禍の影響で旅費の支出がなくなったため、その分の予算も充てて幅広く文献収集を行なった。その結果、特に高価な翻訳研究の辞典や研究書をまとめて入手することができ、上記の研究発表にあたっても大いに活用することができた。 ③に関しては、やはりコロナ禍の影響により他の研究者と直接知り合ったり交流したりすることが困難となったため、まずはオンライン開催の学会、シンポジウム、研究会等に可能なかぎり参加することにしたが、特に海外との時差の問題によりリアルタイムでの出席が困難なことが多く、あまり目的を果たせなかった。したがって、③については今後の課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献調査と研究成果の発表についてはほぼ予定通り進捗している。しかし、他の研究者とのネットワーク作りや情報交換に関しては、コロナ禍の影響で主流となったリアルタイムでのオンラインミーティング(学会、シンポジウム、研究会等)には特に海外との時差の問題により参加が困難なことが多く、あまり目的を果たせなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も、基本的には上記の研究実施内容①から③を継続する。 ①に関しては、まず昨年度行なった研究発表を活字化し、学会誌に論文として投稿する予定である。また、アチャガの創作と翻訳を他のバスク語作家のケースと比較した論考の執筆も計画している。同時に、昨年度刊行したアチャガの小説『アコーディオン弾きの息子』の邦訳に対する反響が続いており(本報告書の執筆現在、第七回日本翻訳大賞の最終候補作品に選出されている)、新たにアチャガの別の作品も翻訳中のため、日本国内でのバスク語文学紹介のためのアウトリーチ活動も引き続き実施していく。さらに、学会発表ではないが、バスク大学夏季講座から招待を受け、バスク語文学の国際的な翻訳・紹介について、バスク内外の研究者に向けてオンラインで講演を行なう予定である。 ②については、昨年度は幅広く文献を収集した結果、バスク語文学関連の資料の割合が少なくなったため、今年度はバスク語文学関連書籍を重点的に集め、現在進行中の研究だけでなく、今後の研究の展開を考えるためにもぜひ活用していきたいと考えている。また、昨年度収集した他の少数言語文学に関する資料の整理も進め、バスク語文学との比較の可能性について考察する。 ③については、今年度中もおそらくオンラインでの活動となるため、引き続き各種学会、シンポジウム、研究会に参加して知見を広げつつ、国内外の個々の研究者ともより積極的にコンタクトを取り、最新の研究情報の収集に努めるとともに、今後の研究遂行のためのネットワーク作りに役立てたい。
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