研究課題/領域番号 |
20K22009
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中尾 沙季子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (50883899)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | パン・アフリカ主義 / アフリカ独立党 / 人種 |
研究実績の概要 |
本研究は、従来、アフリカ大陸外部の社会に特有のものとして捉えられてきた「アフリカ」と「人種」概念の結びつきを、西アフリカ地域の人々の帰属を規定する社会関係のなかで捉えなおすことを主眼とする。 具体的には、1957年に結成され、西アフリカを中心に活動を展開したパン・アフリカ主義政党のアフリカ独立党(PAI)党員の社会的立場が、党の活動の展開に及ぼした影響を検証するため、元党員へのインタビュー調査を実施し、各メンバーの経歴に焦点をあてた人物研究の手法を用いた分析を進めることを予定していた。 2020年度は、とりわけセネガルにおける家系や職業階級などの社会的区分に基づく関係(カースト制)が党の活動の展開に及ぼした影響をさぐるため、セネガルでの調査を行う予定であったが、新型コロナウィルス感染症の世界的な蔓延により、渡航を延期せざるを得なかった。このため、当初の研究計画を大幅に変更することとなった。 アフリカ独立党やその党員に関する史料の大半がセネガルでの調査を前提とするため、同政党の事例から具体的な分析を行う手法をいったん中断し、より広範な視座から、「アフリカ」と「人種」概念の結びつきを分析するため、2020年度は「人種」概念の形成と受容についての二次文献の整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大の影響により、2020年度実施する予定だったセネガルでの史料およびインタビュー調査を延期せざるを得なかった。このため、本研究の中核となるアフリカ独立党や、その元党員たちについての分析を進めることができなかった。そこで2020年度は、本研究課題の中心テーマである「人種」概念の形成と受容について、アフリカ独立党の活動が盛んであった1960年代よりも前にさかのぼって、より広範な視座から捉えるため、二次文献の整理、分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度5月現在、渡航調査再開の見通しが立っていないため、研究計画の再検討が必要である。当面は「人種」概念と「アフリカ」概念が、パン・アフリカ主義運動のなかでどのように用いられてきたかに焦点をあてた二次文献の分析と、オンラインで閲覧できるアメリカ合衆国の「黒人運動」関連の史料の分析を進め、感染状況の変遷に注意しながら、今後の計画を再考する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響で、予定していたセネガルへの渡航・調査ができなくなったため、当該予算を次年度へ繰り越した。繰り越した予算は、調査が再開されればその予算とし、再開の見通しが立たなかった場合は関連書籍の購入や、分析に必要な電子機器の購入費用とする。
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