研究課題
本研究の目的は、18世紀フランスで男性社交組織として発足したフリーメイソン団の一部が女性を受け入れ始めた動機と背景、女性の地位や役割を分析することで、近世から近代への移行期にあるフランスの親密圏や公共圏の形成過程やジェンダー秩序の特質を解明することにある。研究期間1年目には研究動向や史料状況を把握するために文献・史料の収集と読解に着手した。その成果の一部を2年目以降、口頭報告や翻訳、解説、論文として公表した。2021年10月に関西フランス史研究会で口頭報告を行い、先行研究の動向と論点と主要な史料を紹介し、現時点の見取り図と今後の課題を提示した。コートダジュール大学近世史教授ピエール=イヴ・ボルペールによる「時宜を得て政治的・社会的に正しくある―旧体制末期フランスのフリーメイソン・国家・身分制社会―」の翻訳と解説を行い、『人文学報』518-9号(東京都立大学歴史学・考古学教室2022年)に寄稿した。 日本18世紀学会編集『啓蒙思想の百科事典』(丸善出版2023年)収録の「フリーメイソン」項目を執筆した。2021年6月にパリでフリーメイソン研究所が主催した国際研究集会の論文集に18世紀ボルドーのメイソンと植民地との関係に関する論文を寄稿し、2022年に出版した。史料調査については、コロナ禍での渡航制限や体調不良のため、繰り返し延期したが、2023年2月13日から3月1日までパリに滞在し、国立図書館や国立文書館で18世紀パリの女性メイソンに関する集会記録、儀礼手引書、名簿、書簡など手稿史料約40点を複写した。パリ9区カデ通りにあるフリーメイソン統轄団体を訪問し、博物館が所蔵する近代フランスの女性メイソンに関する資料を撮影した。収集した史料の分析から得られた研究成果を2023年度以降、学会発表や論文として公表する予定である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 1件) 図書 (2件)
人文学報(東京都立大学歴史学・考古学教室)
巻: 518-3 ページ: 101-133
史潮
巻: 新91 ページ: 92-102