研究課題/領域番号 |
20K22014
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
高田 雅士 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特任講師(ジュニアフェロー) (00876261)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
キーワード | 日本現代史 / 地域史 / 史学史 / 住民運動 / 文化財保存運動 |
研究実績の概要 |
本研究は、高度成長期の歴史や文化をめぐる住民運動に即して、地域社会の変容とそのなかで顕在化する人びとの歴史意識について明らかにしようとするものである。具体的には、京都府南山城地域をフィールドとし、1973年に城陽市で「緑と教育と文化財を守る会」(現「城陽の緑と文化財を守る会」)が結成されるに至るまでの同地域における文化財をめぐる住民運動を対象とする。1年目となる2020年度には、以下の成果を得ることができた。 第一に、城陽の緑と文化財を守る会現代表の福富城介氏から聞き取りを実施することができた。福富氏からは、生い立ちや学生時代の取り組み、城陽市役所に就職することになった経緯、城陽市社会教育課時代に携わった文化財行政、緑と教育と文化財を守る会での活動、現在進めている取り組みなど、多岐にわたるお話を伺うことができた。 第二に、京都府立京都学・歴彩館、および城陽市歴史民俗資料館での史料調査をおこなうことができた。なかでも、京都府立京都学・歴彩館においては、城陽団地自治会による住民運動に関する史料を収集することができた。財団法人日本労働者住宅協会の事業として建設された城陽団地では、自治会を中心に山砂利公害反対運動や保育所づくり運動、そして新しい小学校の建設を目指す運動などが展開された。同地域での文化財保存運動の盛り上がりの背景には、そうした城陽団地を中心とする住民運動の盛り上がりが背景にあることが収集した史料群からは浮かびあがる。 第三に、関係文献の収集に努め、その読解を進めるなどした。とりわけ、高度成長期の住民運動に関する先行研究や同時代の文献を広く集め、インプットすることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響により、現地での調査を充分におこなうことができなかった。とりわけ、運動当事者からの聞き取りや個人所蔵史料の捜索を中心とする本研究においては、致命的な事態でもあった。 しかしながら、そうしたなかでも現地での調査を実施することができ、福富城介氏からの聞き取りや、資料館等での史料調査がおこなえたことは2020年度の収穫であった。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は、新型コロナの感染状況にもよるが、現地での調査をより積極的に進めていく予定である。福富氏からの追加での聞き取りをはじめ、他の関係者を紹介していただくことも検討している。 さらに、国立国会図書館などにおいては、『京都新聞』、『京都民報』、『洛南タイムス』などの地域新聞を悉皆調査し、城陽市に関わる記事を収集していきたい。文化財保存運動を単体で検討するのではなく、高度成長期の地域社会のありようのなかで運動を理解する必要があり、そのためには多様な地域の動向を把握しなければならない。 以上の作業がある程度進んだところで、学会での研究報告をおこない、その成果をアピールしていきたい。その後、学会報告での議論をふまえ、論文の執筆に取り組みたい。完成した論文は、学術雑誌への掲載を目指す予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響によって、旅費として計上していた予算がほとんど執行できなかったことによる。次年度は、感染状況を見計らいながら、旅費の執行を進めていく計画である。
|