研究課題/領域番号 |
20K22027
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
梅原 秀元 立教大学, 文学部, 特任准教授 (00840117)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 医学史 / 軍事史 / 建築史 / 病院史 / ドイツ近現代史 / 第一次世界大戦の歴史 |
研究実績の概要 |
助成2年度(2021年度)は、前年度から引き続き、バラック(野戦病院)に関連する領域として、19世紀から20世紀にかけてのドイツを中心に軍事史および病院史と軍陣医学(Military Medicine)の歴史研究の文献および同時代の関係する文献の調査を行った。前年度は、本研究が対象とするドイツについて第一次世界大戦期およびその前後の時期の軍陣医学・医療の歴史研究状況について確認した。本年度は、第一次大戦期の野戦病院についての最新研究であるAlina Enzenberger (2021)Uebergangsraeume. Deutsche Lazarette im Ersten Weltkrieg および、ドイツの仮設建造物史の数少ない研究であるAxel Dossmann et al (2006)Architektur auf Zeit. Baracken, Pavillions, Container を中心に本研究の研究状況の確認および一次史料調査に向けての調査を行った。 また、新型コロナ流行の世界的な流行の終息が見いだせなかったため、ドイツの公文書館に対して、大戦前のバラックについての一次史料の綴りの複写を依頼し、電子データで取り寄せを行って、ドイツでの現地調査が困難な状況下での史料調査・分析に踏み出した。綴り丸ごとの複写依頼になるため、どこまで収集できるかは未知数の部分があるが、調査の可能性を広げるものと考えている。 有力な先行研究および入手可能な史料の拡大をおこなって、本研究が前年度より対象としている第一次世界大戦前後の時期のバラック(野戦病院)についての調査を進めた。その際には、前年度における空間についての方法論的な作業とのすり合わせに留意して行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の世界的な流行下でも、幸いなことに研究に必要な文献調査については、前年度同様、インターネットなどを通じて調査を進めることはできた。 しかし、研究代表者が新型コロナ禍での授業対応に手間取り、本研究への時間と労力を十分に確保できたとは言えない状況だった。そのことから、前年度に想定したほど調査を進めることができなかった。とくに、本研究にかかわる野戦病院やバラックの歴史研究についてはドイツでも研究蓄積が薄く、ようやくEnzenbergerによる研究が出たことで文献調査の道筋が開けた。 そして前年度に引き続き、新型コロナ禍によって、本研究で必要なドイツでの史料調査を行うことができなかった。この点が「やや遅れている」とする最大の理由である。2021年夏を予定していたが、この時期での実施もドイツおよび日本での流行が拡大したために見送らざるを得なかった。そのため、現地の公文書館の史料の綴りを丸ごと複写依頼する方法を試したが、やみくもに複写依頼をすることも難しく、調査が思うように進まなかった。 このように新型コロナ禍の状況によっては、助成期間中の調査実施自体が難しくなったため、当初の計画と照らし合わせて、「やや遅れている」と判断せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
調査対象とするバラックが関係する、野戦病院などの軍陣医学について、軍事史と医学史(とくに病院史)の研究文献および本研究が対象とする19・20世紀の文献をもとにした調査を継続する。並行して、軍事、植民地、学校衛生の各領域でのバラックについて、研究文献や当時の刊行史料を用いての調査を継続する。これは、もともと軍の野戦病院での利用を想定されていたバラックが、本来の目的とは違う目的でも利用されていく過程を明らかにするための作業である。 さらに、こうした利用から読み取れる、仮設建造物の持つ特性について明らかにしたい。 これらの目的のために、新型コロナウィルスの流行状況にもよるが、ドイツの公文書館及び公立及び大学図書館での史料調査も行う。 研究遂行上の課題としては、やはり、新型コロナウィルスの流行下における助成期間中でのドイツにおける調査の実施である。しかし、ドイツおよび日本でコロナ対策を緩和する方向に転換させているため、2022年度中に可能な限りドイツでの調査を行いたい。その際には、デュッセルドルフ大学と、フライブルク連邦軍文書館、およびバーデン・ヴュルテンベルク州(BW州)の州立文書館に重点を置きたい。これは、デュッセルドルフでは医学史学科の協力を見込め、同大学図書館および同市の文書館での調査(デュッセルドルフ市立バラック病院についてなど)を行うこと、連邦軍文書館は軍に関係する重要な文書館であること、BW州は、BW州の軍関係の文書が比較的保存されており、日本からの複写依頼も可能であり、地理的にも軍文書館と近いことから、これら3つないしはいくつかについて調査を行いたい。 これらの調査を行って、これまで遅れ気味である研究状況を改善させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたドイツでの現地調査を実施しなかったため。 次年度は、ドイツでの文書館や図書館での史料調査を行う予定で、ドイツへの渡航費、現地で複数の図書館および文書館を訪れるため、その際に必要となる交通費、調査した史資料の複写費、そして研究文献や調査対象の時期の文献の購入費に対して助成金を使用する予定である。
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