2022年度は、新型コロナ禍で見合わせていた、ドイツでの史料調査を実施した。調査では、第一に、地理的にはフライブルク市およびバーデン地域、時期は第一次世界大戦期に重点を置いて調査を行った。フライブルク市については、第二次世界大戦および戦後の時期も対象とした。この調査のために、フライブルク市にあるドイツ連邦軍文書館、フライブルク市立文書館、フライブルク州立文書館およびカールスルーエ州立文書館の4つの文書館で未刊行史料の調査・収集を行った。これと併せて、デュッセルドルフ大学図書館において、関連する刊行資料の調査を同大学医学史学科の協力のもと行った。昨年度はこれら収集した史資料の解読分析を開始するとともに、先行研究との関係の中での位置づけを検討し、研究報告ないし論文へとつながるように研究を継続した。 本プロジェクト全体としては、新型コロナ禍下で、予定していたドイツでの史料調査の時期が大幅に遅れ、かつ回数も1回しか実施できず、コロナ禍のマイナスの影響を大きく受けた。しかし、その中でも、昨年度の史資料調査によって、フライブルク市および同市があるバーデン地方を例から、第一次世界大戦期のドイツで木造バラックが、野戦病院だけでなく、倉庫や兵舎など戦争の様々な用途で利用されていたこと、そして、そのバラックが戦後はただ(今風に言えば)粗大ごみのようにして捨てられるだけではなく、売りに出されたり、住宅として利用されたりしていたことが確認された。さらに、そうしたことは第二次世界大戦後にもあったらしいことがフライブルク市の例からうかがえた。さらに、第一次大戦当時のドイツ軍が採用していたバラックメーカーについての史資料も収集でき、木造バラックについて経済史的な観点から研究するための起点(メーカーについての調査など)を作ることもできた。
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