研究課題/領域番号 |
20K22028
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
深串 徹 愛知大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (90881657)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 視覚障害者 / 台湾 / 脱植民地化 / 戦争 / 視覚障害教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本からの脱植民地化が、台湾の視覚障害者のおかれた状況にどのような変化をもたらしたかを検討するものである。具体的には、以下の二つの視点から分析を行う。第一に、植民地統治終了の前後で、視覚障害教育の内容、視覚障害者の就業パターン、公的支援の実質にはどのような変化が生じたのか。第二に、学校教科書やメディア等において、視覚障害者はどのように社会的に表象され、その表象は植民地統治の終了前後でどのように変化したかである。このような検討を通じて、先行研究の少ない台湾の視覚障害者政策の歴史的な背景を整理するとともに、視覚障害者の視点から脱植民地化の一断面を明らかにするのが本研究の目的である。 2021年度は、前年度に引き続き国内の大学図書館を中心に、資料収集を行った。また、『台湾日日新報』と『中央日報』のデータベースを活用し、新聞報道を通じて、視覚障害者政策の内容や、視覚障害者の社会的表象について分析した。 研究の成果の一部として、日本統治時代と中華民国時代に勃発した二つの戦争において、台湾人視覚障害者がどのように関与することを求められ、また実際に関与したかという問題について調査し、論文にまとめて学会誌に投稿した。同論文執筆の過程で、日本や中国だけではなく、アメリカなどのアジア域外における視覚障害者政策や、国際機関から台湾が受けた影響についても検討する必要を感じた。次年度は、資料収集の範囲を拡大し、グローバルな視座から、台湾の視覚障害者にとっての脱植民地化の意味について考察することを課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、台湾の視覚障害政策や視覚障害教育の歴史的展開を検討するにあたり、台湾の盲学校や文書館で資料調査を行い、政策当局の思惑や、当事者である視覚障害者の受け止め方を明らかにすることを、重要課題の一つとして位置づけていた。 しかし、2020年からの新型コロナウイルス蔓延にともなう渡航制限により、本年度も台湾での資料収集を行うことがかなわず、国内での調査も、国立国会図書館などが入館制限を行っている状況で、満足に実施することができなかった。現在までのところ、新聞報道や回想録などを使用した基礎的な調査を行うにとどまっている。 以上の理由から、当初の研究計画に比べ、進捗状況は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
台湾への渡航のめどが立たない中で、国内で収集可能な資料に基づき、本研究計画を遂行していく。具体的には、台湾人視覚障害者が留学していた記録の残っている筑波大学附属視覚特別支援学校や、京都府立盲学校が所蔵している資料、あるいは台湾の研究機関や図書館が提供しているデータベースなどを使用することを想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大による渡航制限により、計画していた国内外での資料収集が実施できず、旅費を計上することがなかった。2022年度は、感染状況を見ながら、夏季に京都と東京で資料収集を実施することを計画している。
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