本研究は、弥生時代における、儀礼的行為と集団規模の暴力の関係性を分析し、集団の団結が実際に起きた暴力にどの程度の影響を与えたのかについて明らかにすることを目的としている。最終年度は遅れていた調査を実施するとともに、残るデータ集成を進め分析・検討を進める予定であった。まず、筑紫野市教育委員会の隈・西小田遺跡の武器・古人骨を改めて実見調査し、SfM/MVSおよびレーザー計測により、三次元モデルを作成した。実見調査から、副葬・埋納された石鏃は、サイズ・厚み、左右の調整など、均一性・画一性が高い様相がみられた。しかし、中には切先が破損するなど、副葬品ではあるがやや様子が異なる資料もみられる。骨の傷と照合・一致するかも含め分析を進めている。こうした道具と傷の照合は、出土状況から利器が嵌入していた事例(縄文時代の上黒岩遺跡)で試みた。三次元データ間の照合し、また三次元データから抽出した利器の断面形状と刺突痕跡を楕円フーリエ解析・主成分分析によって比較した。出土状況とは矛盾しない結果が得られた。関連して、古人骨の三次元モデルを用いて、幾何学的形態測定を行い、中国地方などの分析を行った。その結果、岡山県で中期を境に人骨形態が変化している可能性が指摘でき、集団構造が変化した可能性が示唆される。この時期は巨大古墳が築造される時期であり、それと連動して集団が変化している可能性が考えられる。このように、集団・社会構造の変化が連動する現象が見られ、暴力のような社会変化も、集団関係の変化に影響を与えている可能性が考えられる。 今後は、実見調査によるデータ収集を追加で行い、現在得られているデータと合わせて分析を進め、最終成果発表する。
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