本研究の目的は、①日本と台湾における「プロライフ運動」の現状、及び②そういった運動における宗教の位置付けを明らかにすることである。2020年度から2021年度にかけて、報告者は立法院の議事及び発言システムを用いて、台湾の優生保健法の成立及び法律の改正を整理した。また、日本と台湾における胎児生命の尊重を唱える団体との初歩的な接触ができた。2022年度には、新型コロナウィルス感染症に対する水際対策が存在する中で、台湾での実地調査を再開した。前年度の成果と制限を踏まえて、新型コロナウィルス感染症が収束していく2023年度の主な研究成果を以下の2点にまとめる。 1、台湾における「プロライフ」団体の現状把握 報告者は関係する団体や関係者4カ所にインタビュー調査を実施し、それぞれの団体の性質、成立経緯、組織構造、他団体との交流状況などを把握することができた。これらの団体はキリスト教的な背景を共有しながら、それぞれ危機的妊娠、養子縁組のあっせんなどのサポート事業を行ってきた。上記する調査を通して、キリスト教をめぐる性と生殖、家庭観及び社会福祉事業といった視点から、2000年代以降胎児生命尊重運動の動向を理解する必要があると分かった。 2、台湾におけるカトリックの動きと国際組織の動き 報告者は昨年度に引き続きカトリック教会が中心となって開催されるMarch for life運動の実地調査を行った。昨年度と同様に、複数の教区によって展開され、今後定例の行事として定着していく可能性も見えた。また、台湾で開催されるイベントであるが、アメリカ、日本などの胎児生命尊重を唱える団体も出席し、国際間の繋がり及び今後の影響力についても着目すべきである。
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