研究課題/領域番号 |
20K22040
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
村津 蘭 東京外国語大学, 現代アフリカ地域研究センター, 研究員 (50884285)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | ベナン / 映像人類学 / 宗教人類学 / マミワタ / 精霊 / 都市 / アフリカ |
研究実績の概要 |
本研究は現代アフリカの都市部で宗教・民族を超えて広がる精霊信仰を身体と環境の関係から探究するものである。これまでの研究では都市で興隆する宗教は、政治や経済などを表象・象徴するものとして論じられる傾向があり、その結果、都市的環境の中で人々の「超常的」経験がいかに説得力を持ち信念を形成していくかについては十分に明らかにされてこなかった。 本研究では、ベナンの都市の若年層を中心に憑依や夢を通して現出する精霊マミワタに焦点をあて、都市的環境と身体の相互作用の中で精霊が感じられるようになる過程を明らかにすることで、現代アフリカ都市を生きる若者の身体的現実と信念の形成過程を示し出すことを目的とする。また同時に、調査での撮影映像を本媒体に組み込みながら民族誌を編むことで感覚を喚起し「経験」へと導く新たな民族誌のあり様を提示したいと考えている。 本研究は、フィールドワークに根差した実証的研究であるが、昨年度はコロナの蔓延の影響を受け、フィールドワークを実施することができなかった。従って、本年度は文献調査やこれまでのフィールドデータによる調査、研究会・読書会での議論を中心に研究を進めた。文献調査では、精霊マミワタの先行研究の中で信念の形成過程を検討した。それらを念頭にこれまでの調査データを精査したところ、精霊の現れる「夢」は覚醒後の身体的な状態とつなげられることで、経験が組織化されていることが明らかになった。さらに、情動についての研究会のに参加する中で、近年の文化人類学における関連するテーマの動向について理解を深め、マルチモーダル人類学・映像人類学の研究会への参加、発表を通して、多層的な「現実」の在り様を表す方法について検討した。また、シンポジウムで若者の身体と精霊の関わりについて発表することで、アフリカの都市的身体と憑依についての議論を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究はフィールドワークに根差した実証的研究であるが、昨年度はコロナ蔓延の影響を受けベナンに渡航することができなかった。研究の中心をなすフィールドワークができなかったため、研究の進捗は遅れているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はコロナ蔓延の様子を見ながらも、可能な際に渡航しフィールドワークをすることを予定している。また、フィールドワークが困難な場合にはSNSなどを利用し、精霊マミワタに関する言説の生成の仕方や、信者へのインタビューをオンラインで行うことで研究を進めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度はコロナ禍のため、フィールドワークのための海外渡航ができなかったため、その予算を次年度の調査にあてたいと考えている。
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