本研究の目的は、ボリビア東部低地の異文化間・文化内複言語教育を事例として、主に先住民言語教育実施過程のコミュニケーションに着目しつつ、民族誌的に自他関係や社会変化の議論を問い直すことである。そのために、最終年度となる本年度において行った研究の内容と成果は次の通りである。 1. 前年度に引き続き、手持ちの民族誌的データの分析を行い、言語人類学、教育人類学、文化人類学、ラテンアメリカ地域研究を含む幅広い分野の書籍を収集・整理した。 2. 前年度までの研究成果を踏まえ、国内の所属機関内での研究発表や、その成果とつながる研究論文の刊行を行った。2021年11月には、個人発表として、明星大学全学共通教育委員会第3回研究会「クロッシング」にて、国内・学内の大学論・語学教育論を踏まえつつ、第二外国語としてのスペイン語教育の理論的検討を行った。2022年3月には、国内の多文化・多言語教育、多文化共生、人類学的翻訳論などの議論を参照しつつ、異文化理解に向けた学問としてスペイン語教育を多角的・理論的に検討する論文を刊行した。所属機関の研究会における発表と質疑応答では、国内の高等教育機関や所属機関における教養教育課程・組織編成の歴史的変化についてのコメントや、発表者が行ってきたボリビアのチキタニア地方における先住民言語政策についての民族誌的調査との関連についての質問、さらには多文化・多言語主義政策における歴史的視点の重要性についての指摘など、本研究の今後の方向性について様々な分野から重要なフィードバックがなされた。今後は昨年度と今年度の研究で得られた視点を活かしつつ、民族誌的調査から国内の高等教育機関における多文化・多言語教育を通した社会化に至る一連の過程を人類学的に理論化し、教育実践としても活かす方法を引き続き探っていきたい。
|