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2021 年度 実施状況報告書

インフラの時間性に関する人類学的研究:ラオスの流れ橋の事例から

研究課題

研究課題/領域番号 20K22046
研究機関鹿児島大学

研究代表者

難波 美芸  鹿児島大学, グローバルセンター, 特任講師 (20883888)

研究期間 (年度) 2020-09-11 – 2023-03-31
キーワードラオス / インフラストラクチャー / 気候変動 / レジリエンシー / 流れ橋
研究実績の概要

本研究は、中国と国境を接するラオス北部のルアンナムター県で、流れ橋(毎年雨季になり川が増水すると流失し、乾季には人々が再び設置する橋)という、環境と連関したインフラ作りの実践に光を当てることで、当該地域の生業やモビリティの変化と、国境地帯の開発によって人々が経験するグローバル化との関係を明らかにしようと試みている。
2021年度は、2020年度から引き続き新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、調査対象地域であるラオスへの渡航が困難だったため、もっぱら文献調査を進めるとともに、社会水文学を中心に、本研究に関わる隣接領域のレビューを行った。社会水文学は人間社会と水との相互影響関係と共進化の再起的なあり方に注目するものであり、人間と環境の相互作用と生成変化に注目する本研究の視点と共通する部分がある。あくまで定量的データを用い、予測を目的としている社会水文学とは目的において一致しているとはいえないものの、気候変動の時代にあって、より多くのファクターが水害や河川流域環境に影響を与える現在、河川インフラと社会、環境との関係を考える上では重要な示唆を与えるものである。2021年度はこうした視点から社会水文学のレビューを行い、水資源水循環学会研究大会で発表を行った。
加えて、気候変動時代のインフラは災害リスクに対してどのようなアプローチを持ちうるのかを探求した。本研究では2020年度にPhilosophy of Human-Technology Relations Conferenceで発表を行ったことから、その内容をもとに投稿論文を執筆し、善い技術をめぐるポスト現象学的な視点と人類学との接点を探った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

新型コロナウィルス感染拡大の影響によりラオスへの渡航を断念せざるを得なかった。そのため、実地調査で明らかにしようとしている部分についての研究が著しく遅れている。本研究の遂行には、調査対象とする流れ橋が作られる過程や、そこで用いられる資材の栽培・採集方法、橋の使用のされ方や、橋を作る住民たちの生活に関する現地調査を行うことが必須であるため、補助事業期間中は、各年度に一度ずつラオスへ調査渡航することを予定していた。しかし、ラオスでは新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、2020年度から現在に至るまで引き続き外国からの入国制限措置が取られている。そのため、現地への渡航を行うことが不可能となったため、2021年度は文献研究を中心に行ってきた。文献による調査は順調に進んでいるため、本研究の進捗状況はやや遅れているものと位置付けられる。

今後の研究の推進方策

ラオスへの渡航が可能となった場合には、2022年9月もしくは2023年2月にラオスへの渡航を計画し、(1)鉄道開通による村への影響と、(2)流れ橋の制作における住民の協働という2点の調査項目を設定し、参与観察を行う。2021年12月に中国雲南省からラオス首都ヴィエンチャンまでを縦断する高速鉄道が開通した。ルアンナムター県はこの国際鉄道のラオス側への入り口であり、国境地帯における開発が進められていることから、(1)の調査項目では、これに伴う村の生活と経済活動への影響等について調べる。(2)では、流れ橋の物質的特徴と、設置にあたっての協働の在り方を明らかにするため、橋作りの技術と労働、役割分担に関する詳細な記録を取る。渡航が適わない場合には、これまでの文献調査の結果をまとめるほか、ラオスにいる調査助手とのテレビカンファレンスなどを通した情報の補足を試みる。研究成果は4S(Society for Social Studies of Science)で発表し、論文として『文化人類学』 などの学術雑誌に投稿する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルス感染拡大の影響により、国外調査はおろか国内調査も行うことができず、また、学会発表に関してもオンラインで行われたため、予定していた旅費を全く使用することがなかった。2022年度は、新型コロナウィルスの影響がやや落ち着いてきたため、十分に感染予防策を講じた上で可能な限り予定していた調査を行い、国際学会への対面での出席を行う予定である。

研究成果

(3件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Material Itineraries of Electric Tuk- Tuks: The Challenges of Green Urban Development in Laos2021

    • 著者名/発表者名
      Namba Miki
    • 雑誌名

      East Asian Science, Technology and Society: An International Journal

      巻: 15 ページ: 173~191

    • DOI

      10.1080/18752160.2021.1897737

    • 査読あり
  • [学会発表] 技術の「善い」媒介的役割に関する人類学的研究の可能性:ポスト現象学との対話から2021

    • 著者名/発表者名
      難波美芸
    • 学会等名
      日本文化人類学会
  • [学会発表] 「人新世のインフラストラクチャー」を志向する:人類学と社会水文学の対話から2021

    • 著者名/発表者名
      難波美芸
    • 学会等名
      水文・水資源学会/日本水文科学会2021年度研究発表会

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公開日: 2022-12-28  

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