研究実績の概要 |
グローバル金融危機は、民間企業の経営破綻のみならず主権国家の対外債務(ソブリン債務)の不履行をも引き起こす。それは、金融市場を大きく混乱させるのみならず、債権者による債権回収の試みを招き、債務国による経済再建を阻害する。そこで、事後処理方法である「ソブリン債務再編」のメカニズムを構築することが急務であるものの、議論状況は今なお混沌としている。そこで本研究は、ソブリン債務再編に関する国際法秩序構想についての理論的な方向性を提示し、その現実適合性を実証しようとするものである。実践的な解を模索する本研究は同時に、グローバル・ガバナンスの法的側面に関する理論的な貢献を見込むものでもある。2020年度は、2020年に試みられた2つのソブリン債務再編(アルゼンチン、エクアドル)、ベネズエラ及びベネズエラ国営石油企業の債務不履行問題および米国裁判所における一連の訴訟、投資仲裁廷に付託された2つのソブリン債券関連紛争(Adamakopoulos v. Cyprus, ICSID Case No. ARB/15/49; Gramercy Funds Management v. Peru, UNCITRAL)、G20が主導する途上国債務減免スキーム(Debt Service Suspension Initiative)、欧州復興基金(7月)の妥結の経緯とその後の展開などを中心に分析と検討を進めてきた。COVID-19感染拡大の影響により口頭報告の機会は限られたものの、成果物のとりまとめは着実に進展した。以上の研究成果は、モノグラフとして公刊予定の原稿として収められる予定である。
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