研究課題/領域番号 |
20K22049
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
久保田 隆 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (50880994)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 国際刑事法 / 国際刑事裁判所(ICC) / 人道に対する犯罪 / 迫害 / ンタガンダ事件 |
研究実績の概要 |
本研究は、「人道に対する犯罪の国内法化および適用上の諸問題に関する研究」という表題のもと、現在国連を中心に条約化の動きがみられる「人道に対する犯罪」について、その処罰に関する日本の法整備のあり方を明らかにすることを目的とするものである。「人道に対する犯罪」条文草案には、加盟国に同犯罪の国内法化(犯罪化)を義務づける規定が含まれているが、日本の刑法には、人道に対する犯罪の処罰規定が存在しないため、新たに法整備を行う必要がある。そこで、本研究では、来るべき立法作業に備えて、ドイツ語圏諸国の立法例および適用事例を参照しながら、人道に対する犯罪の国内法化をめぐる諸論点の提示・解決、および、同犯罪の適用上の諸論点の提示・解決を試みる。 令和2年度は、「人道に対する犯罪」条文草案における犯罪化義務および「引き渡すか訴追するかせよ」の義務の内実に関する検討を行う計画であったが、人道に対する犯罪の一類型である迫害に関して国際刑事裁判所(ICC)が下した判決(いわゆるンタガンダ事件第一審判決)の検討が重要課題として浮上したため、急遽、当初の予定を変更し、同判決に関する調査・検討を優先的に行い、その成果を判例評釈という形で公表した(拙稿「人道に対する犯罪および戦争犯罪の間接共同正犯──ンタガンダ事件」国際人権31号(2020年)122頁以下)。同評釈では、人道に対する犯罪としての迫害の基本構造を明らかにした上で、殺人・強姦・略奪などといった(それ自体が人道に対する犯罪を構成する)行為類型について、それらの行為を基本行為とする迫害が成立する場合であっても、その適用は排除されず、迫害類型とその基本行為をなす類型の両者が同時に成立しうることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、本研究が対象とする人道に対する犯罪に関して国際刑事裁判所(ICC)が下した重要判決(いわゆるンタガンダ事件第一審判決)について検討する必要が生じたため、当初の予定を変更し、同判決に関する調査・検討を優先的に行うこととした。そのため、当初予定されていた「人道に対する犯罪」条文草案における犯罪化義務および「引き渡すか訴追するかせよ」の義務の内実に関する検討を十全に行うことができず、計画に若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、前年度に実施した研究により、人道に対する犯罪の各行為類型のうち、迫害に関するさらなる検討を行う必要性が明らかとなったことから、同類型を中心とした、ドイツ語圏諸国(ドイツ・スイス・オーストリア)の立法例および適用例の調査・検討を優先的に実施する。その際、まず、ドイツ語圏諸国における人道に対する犯罪の規定全般について調査・検討することで、日本が同犯罪を国内法化する際に必要となる議論の素材を提供する。その上で、上記3国における迫害類型に関する規定に対象を絞り、比較検討を行うことで、ICC判例における同類型(この間に、上記ンタガンダ事件に関するICC上訴裁判部判決が下されているため、その検討も不可欠である)との相違点を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、当初計画していた国外出張を行うことができなかったため、令和2年度に執行する予定であった予算の一部を次年度へと繰り越すこととした。当該繰越金は、令和3年度分の旅費と合算し、同年度中に実施を予定している出張のための費用とする。
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