本研究の目的は、国際刑事裁判所(ICC)が管轄する中核犯罪の「周辺的関与者」(強制収容所の掃除係のように、犯罪組織の日常的職務を担当したに過ぎない者)の処罰の限界を探ることにある。 以上の問題意識の下、まず、(1)ICC判例の調査を通じて、ICCの共犯成立要件を解明し、近時は関与行為者の主観面に従って共犯の成否が画されていることを明らかにした。次に、(2)周辺的関与者の処罰範囲を画する視座を得るため、ドイツの中立的行為をめぐる議論を調査した。そこでは、行為者の主観面をも考慮し、共犯行為の当罰性を判断する見解が有力であり、これは中核犯罪の文脈でも有益な視座であることが明らかになった。
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