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2021 年度 実施状況報告書

法的判断における論証の役割と機械による裁判官の代替可能性について

研究課題

研究課題/領域番号 20K22059
研究機関大阪大学

研究代表者

西村 友海  大阪大学, 社会技術共創研究センター, 特任助教(常勤) (80884767)

研究期間 (年度) 2020-09-11 – 2023-03-31
キーワード法的議論の理論 / 議論 / 数理議論学 / 人工知能と法 / 法哲学 / 法的推論 / 法解釈 / 論理学
研究実績の概要

本研究では、「法的判断における論証の役割はいったい何か、その役割は機械によって代替不能なものなのか」という問いを①機械の判断にはどのような特徴があるのか、また人間の推論実践との相違は何か、②法的判断における論証の意義と役割は何か、という二つの具体的な問いへと分割し、順次それらを解決することでこれに回答を与えることを目標としている。
前年から引き続き、本年は特に②の問いに関する研究を継続した。前年の研究・調査の結果、そもそも法的議論や計算機科学における議論研究の進展について国際的な偏りがあることが見いだされたため、本年はその偏りや研究の状況、研究テーマの分析と整理に注力し、研究活動を進めた。
まず、偏りの具体的な内容としては次の2つの点が見いだされた。第一に、法(哲)学における法的議論の研究については、日本の研究者が主として参照する英米独仏においては議論の進展があまり見られない一方で、イタリアやオランダといった国では継続的な研究課題として扱われており、実際に研究の進展が見られる。第二に、計算機科学における議論研究については英語という共通言語による研究成果が共有されることもあって法学に比すれば国際的に広く研究がなされているように見えるが、やはりイタリアやオランダの研究グループの存在感が際立っていることが見いだされた。
また、こうした研究状況と連動して(あるいはその背景をなすものとして)、論理や議論についての研究がどういった研究文脈に位置付けられる研究課題なのか、という点についても国ごとに相違があり、その結果として「論理」「議論」という言葉で指す事柄にも多かれ少なかれ相違が見いだされた。そのため、年度後半ではこれを統合するための枠組みを探索し、整理することを試みた。こうした整理の試みについては試論的なものを日本法哲学会にて報告した他、関連研究者に構想を示して意見をもらうなどしている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初は②についての作業を終了し、①の作業へと移行した上で本年度のうちに研究課題について一通りの研究成果を出す予定であったが、①の作業については本格的な着手に至っておらず、「やや遅れている」との評価が適切だと考える。
もっとも、このような進捗状況に至った背景としては、②についての研究が当初考えていた以上に①のための準備作業として大掛かりなものであったこと、また②についての先行研究が、当初期待していたほど十分な到達点にまで至っていなかったことなどがある。そのため、本研究ではこれらを補充するために必要な事項の洗い出し、そして(本研究の遂行にとって必要最小限な限りで)そうした不足を補うための作業を行っていることから、遅れに相当するだけの成果が出ているものと考えている。

今後の研究の推進方策

上記の通り、本研究については①機械の判断にはどのような特徴があるのか、また人間の推論実践との相違は何か、②法的判断における論証の意義と役割は何か、といった作業を予定しており、前年度は両作業についてすべて完了させる予定であったが、②の作業を進めるに留まっている。
もっとも、②の作業について十分な時間をとった結果として、②の作業と①の作業とをスムーズに統合し、また①の作業の基礎とすることのできるような枠組みが概ね出来上がっている。こうした研究成果を踏まえて、①の作業を、機械の判断(の背景をなすいわゆる「形式的な」論理についての特定の考え方)を議論一般の研究の下に組み込んだ上で、議論の種別の相違という問題として捉え直すことによって、本研究の当初の目的である「法的判断における論証の役割と機械による裁判官の代替可能性」について、一定の回答を与えることを狙う。

なお、本年は昨年度の研究会での報告成果を踏まえた論文執筆も数件予定しており、昨年度の成果を順次文章化して公表することにも努めていきたい。

次年度使用額が生じた理由

「現在までの進捗状況」でも記載の通り、本年度に予定していた作業のうち、「②法的判断における論証の意義と役割は何か」という問いに関連した研究・調査に注力していたため、「①機械の判断にはどのような特徴があるのか、また人間の推論実践との相違は何か」という問いに関連した研究・調査に着手することができておらず、次年度において着手することとせざるを得なかった。こうした事情から、当然ながらこの研究・調査にかかる費用の一切については次年度に繰り越すこととし、次年度の作業のために用いることとなった。これが次年度使用額が生じた理由と、その使用計画である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 2021

すべて 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 議論に関する研究の簡単な紹介2022

    • 著者名/発表者名
      西村友海
    • 学会等名
      CREST論理セミナー
  • [学会発表] 「法的議論」に関する近年の研究と論点の整理2021

    • 著者名/発表者名
      西村友海
    • 学会等名
      2021年度日本法哲学会 学術大会・総会
  • [学会発表] 法的議論と法の支配――D. CanaleとG. Tuzetの所説を題材に2021

    • 著者名/発表者名
      西村友海
    • 学会等名
      東京法哲学研究会(7月例会)
  • [図書] 紛争解決のためのシステム開発法務2022

    • 著者名/発表者名
      松尾 剛行、西村 友海
    • 総ページ数
      562
    • 出版者
      法律文化社
    • ISBN
      9784589041883

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公開日: 2022-12-28  

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